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二年目の春・3

「タマちゃんなんか来たら喜びそう。」

一方ポリネシア文化センターに居た修学旅行一行は敷地内を見学してショーを見たりしていた。

日本語が堪能なガイドさんが少女達でも飽きないように解説や話をするのを聞きながらカヌーで敷地内を見て回るなど、日本では体験出来ないものになっている。

正直なところ真珠湾の戦争関連の見学はあまり好評とは言えなかったもののこちらは好評だった。

まあ森や木々の自然からして日本とハワイでは違うので、ハワイ初体験の面々は景色を眺めてるだけでも楽しいのが本音だろう。


その一方で高畑は教え子達と一緒に見学をしながらも昨夜のことを思い出していた。

「超君の様子がおかしいか。」

「はい。」

時を遡ること半日、昨夜あやかと千鶴は超鈴音と話をしたその足で高畑の元に行き以前からの違和感やついさっき超鈴音と話した内容を高畑に全て話していたのだ。

今までは確信が持てなかったので自分達の胸に秘めていたが確信を持った以上は、このまま見過ごす訳にはいかない。

誰に相談するべきかと悩んだ二人だが時差の影響で麻帆良の横島に連絡するには時間が遅すぎることと、最近の高畑は横島ともかなり親しいので高畑ならば大丈夫だろうとまずは高畑に相談することにしたようである。


「それは危険を感じるほどかい?」

「いえ、そこまでは。 ただ焦りのようなものは少し前からありました。」

対する高畑はこのタイミングで超鈴音の異変に気付き相談に来た二人に心底驚いたのが本音だが、二人の状況把握も直感も間違ってはいない。


「横島君が君達を信頼してる訳が分かった気がするよ。 単刀直入に言えば君達の予測は外れてはいない。 そして学園長先生を中心に横島君も加わりそれへの対応が今行われている。 詳しくは僕の口からは言えないけどね。」

正直この件を少女達に気付かれることに関しては近右衛門も横島も事前に想定してなく、土偶羅はその可能性に気付いていたものの少女達が問題になる可能性はごく小さいので提言まではしてなかった。

曲がりなりにも社会に触れてる横島の周囲の少女達がここで無闇に超鈴音をつついたり騒いだりすることがないのを見守って来た土偶羅は理解している。

社会人の基本に『ほう・れん・そう』などと言われることもあるが、頼るべき人に頼り協力すべき人に協力して任せるべき人に任せるというのが横島のやり方だ。

あやかや千鶴でさえそんな横島の影響を強く受けている結果が今回の高畑への報告と相談であろう。


「横島さんまで?」

「動かざるを得なかったという方が正しいのかもしれない。 超君の問題はそれだけ危険で難しい。 君達にこの件がいつ説明されるかは僕には分からないが君達の家の事情を考えるといずれは知る日が来るだろう。 とりあえず修学旅行期間中はそれで納得して欲しい。」

これが近右衛門や横島ならばどうするのだろうと密かに思う高畑だが、高畑としては話せる範囲で話して頼むことしか出来なかった。

あやかと千鶴の二人は事態が思っていた以上にデリケートなことを知ると、高畑の言葉に素直に従う以外の道はない。

元々二人が超鈴音のことを気にしていたのは横島との関係の微妙さからであり、極論を言ってしまえば横島と自分達の日常が守れるならばそれで問題はない。

超と葉加瀬にはクラスメートとして友人としての思いはあるが、だからと言ってここで下手に動くのはどう考えても悪手でしかないのだ。

最後に高畑は修学旅行期間中に超達に妙な動きがあれば教えて欲しいと頼み二人を部屋に帰していたのだ。




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