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二年目の春・3

「今のところ順調じゃよ。」

「問題はこれからか。」

そんなクルトはともかく、関東魔法協会本部では近右衛門と雪広清十郎と那波千鶴子に芦優太郎の四者が超鈴音関連の報告書を見てホッと一息ついていた。

今回は特に集まる予定ではなかったが未来人の拠点制圧という問題に清十郎と千鶴子は気が気でなかったようで、昨夜の報告を聞きに来ている。

一歩間違えれば大変なことになるのは考えるまでもなく、別に横島や土偶羅を信頼してない訳ではないが任せっきりで放置していい問題でもない。

特に近右衛門達三人は力を合わせてこれまでも困難に立ち向かって来ただけに、今回も直接動かずともそれは不変だった。


「今年の麻帆良祭での計画はこれで阻止出来るだろう。 だが人の意思まではそう簡単には変えれない。」

麻帆良内外の拠点の制圧もまだ途中だが土偶羅の分体こと芦優太郎はすでに麻帆良祭での計画は続行不可能だと言い切る。

ロボット兵器は昨夜に続き今夜でほぼ確保出来る予定でまだ部品でしかない物資もかなりの割合ですでに確保していた。

肝心の地下に封印されてる鬼神兵はまだ手付かずだが、こちらは今回の件で危険性が再認識されたので近右衛門の手により近日中に封印の強化が行われる予定だ。


「最悪の場合は記憶の消去では済まないと?」

「可能性の話だ。 超鈴音が自らの計画が全くの無駄足で終わったと知りおとなしく未来へ帰るかなど現時点ではわからんからな。 仮定の話として今一度過去に戻るなりして何かを企てても不思議ではない。」

計画の阻止がほぼ確実となった現状に一同は素直にホッとするも、芦優太郎は問題の本質は超鈴音であり彼女が過去の改編を諦めるかはまだ分からないと告げる。

前回の超鈴音に対する方針を決めた時は茶々丸も居たのであえて誰も口にしなかったが、敗北以前に計画が失敗した超鈴音がどう動くかは予測は出来ても本当のところは土偶羅にも分からない。

大人しく未来に帰り自分の世界で生きてくれるのが一番だが、この世界または更に過去に戻り今一度何かを企むことも可能性としてはない訳ではないのだ。


「まあ問題の可能性といえば葉加瀬聡美の方があるがな。 仮に記憶を消しても一度肉体と魂が覚えた影響は僅かながら残る。 再び一から積み上げたとしても確実に元の時間より早く積み上げられるだろう。」

結局超鈴音の計画に関わる人間で問題になる可能性がほぼないのは、計画の一端は知るが協力をほとんどしてない四葉五月くらいであった。

超鈴音に関しては本当に未来に帰ったのか未来に辿り着くまで監視せねばならないし、未来に帰ると言いつつこの世界の過去や数時間前に戻り今一度暗躍する可能性も十分にある。

葉加瀬に至ってはあまり現実を理解せぬままテロとも言える計画に協力しているので、始末に負えないのが実情だった。


「……最悪の場合はワシがやろう。」

芦優太郎を含めて誰一人考えたくはないが超鈴音の計画とその理由を考えると、最悪の場合を想定せざる負えない。

可能な限りそうならないようにするしチャンスも与えるつもりだが、チャンスは二度も三度もは与えられない。

誰かがその手で罪を犯さねば守れぬならば自分がやると近右衛門が決断すると、この場にそれを止める者は居なかった。

まあ実際にそこまで行くとはあまり考えられないが、それでも超と葉加瀬の監視は近右衛門と土偶羅で二人が死ぬまで行われるだろう。

今回の近右衛門達の行動は超鈴音達との長い付き合いの始まりでもあった。

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