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二年目の春・3

「今ごろみんなは真珠湾かぁ。 戦争はともかく中途半端に力を嫌いにならなきゃいいけど。」

同じ頃横島は茶々丸と共に厨房で店自慢のイチゴジャムをコトコトと煮込んでいた。

甘酸っぱいイチゴの匂いが厨房に広がる中、横島は少し心配するようなことを口にする。


「力を嫌いにですか?」

「一部の特殊な人を除けば誰だって戦争も戦うも好きじゃないからな。 ただ平和を望むのと力を嫌い放棄するのは別問題だ。 詳しく知らんが学校だと軍事力なんかは悪のように教えてるんだろ?」

それは戦う力を使うのを好まぬ横島らしくない一言であり、茶々丸は驚きながら意味を確認するように問い掛けると横島は日頃はあまり明かさない本音を語り始めた。

ぶっちゃけ横島は戦うことは今も好きではないが、それでも今ある力を放棄する気は全くない。

前世からの運命に導かれるようにオカルト業界に入り、人の世界と人外の世界の狭間を曲がりなりにも経験した横島には横島なりの想いや考えがある。


「別に今以上の力が欲しい訳じゃないけど必要な時は来るからな。 話し合いなんかで解決出来ないのは超さんを見れば分かるだろ? 過去はともかく百年後もあんな力押しの考え方があるんだからな。」

横島としては少女達を戦いとは無縁の世界に置いておくつもりだが同時にいつまで側に居るかも分からないのも確かで、あまり片寄った価値観や考えに染めるのは望まない。

ただまあ少なくとも木乃香・明日菜・あやか・千鶴は優しさだけでは生きていけない環境なのが現実であり、中途半端に平和ボケになるのが心配らしい。


「麻帆良学園では自治意識の高さから戦争や旧日本軍を一般的に悪だと断定する教育はしてません。 第二次世界大戦を語る際には当時の国内情勢や近代世界史を同時に教えてますので。」

「そうなのか?」

「はい。 内容が内容なので国内外の一部勢力は反発してるようですが。」

エヴァがこの話を聞いていれば自分で甘やかしておいて何を今更と言うかもしれないが、横島としてはそこまで甘やかしてるつもりはない。

そんな横島に対し茶々丸は横島が知らない麻帆良学園の教育事情を説明すると、横島は素の表情で驚いていた。

横島も麻帆良学園では一般的な日本の学校とは違うと理解はしていたが、教育内容まである程度自由にしてるとは思わなかったようである。


「学園長先生もようやるな。」

「麻帆良学園は昔から既存の勢力に煙たがられたり嫌われることが多かったので、今更だと以前に超が話してました。」

麻帆良学園は魔法協会という裏の顔と対妖魔から国の防衛という目的も一面としてあるので、元々過度な力の放棄や戦いの放棄とは考えが合わなかったらしい。

日本の場合だと左翼やリベラルは反米と結び付くが魔法協会はどちらかと言えば親米路線なので、マスコミも教育界も含めてとにかくそちら側とは仲が悪いという事情もある。

加えて雪広・那波を含めた麻帆良派は極東アジアの三か国とは疎遠というか交流全くと言っていいほどないので、極東アジアな三か国と繋がる勢力とも仲が悪い。

まあ元々魔法協会は魔法協会同士の繋がりをさせないようにメガロメセンブリアがしていたので、二十年前まではメガロメセンブリア以外との交流はほとんどなかったのだが。

結果として麻帆良学園は左翼系勢力と関係が悪く下手に気を使う必要がないので近右衛門は半ば開き直って自由にしてるらしい。

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