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二年目の春・3

「カンパーイ!」

そしてハワイの夜は更けていくが、少女達はそれぞれに修学旅行の夜を楽しんでいた。

一般の学校と違い一部例外はあるもののほとんどの生徒が寮生活を送っている女子中等部においては、必ずしも友人と一緒の夜が珍しい訳ではないが。

ただまあ修学旅行という環境は少女達を興奮させるようで、明日菜と木乃香の部屋には夕映とのどかとハルナとさよが集まりアメリカのお菓子とジュースでちょっとしたパーティをしていた。


「普通にお菓子でパーティなんて久々ね。」

お菓子はホテル内の売店で売っていた物で日本では見たことがない物を選んでいる。

アメリカ人独特のちょいと派手にも見えるバッケージが少し微妙な物も中にはあるが、明日菜はお菓子だけの一般的な中学生らしいパーティにちょっと新鮮さを感じていた。


「いつもは何だかんだで豪華になっちゃいますからね。」

日頃からパーティと称して騒ぐことが多い少女達だが、料理やスイーツなど当たり前で中学生らしからぬパーティになることが多い。

修学旅行という短期間ながら麻帆良を離れ横島からも離れての夜は、そんな少女達に日常との違いを感じさせる結果となっている。


「でもさ、これ美味しい?」

「甘すぎるね。」

ただ買ってきたお菓子ははっきりいって味が微妙な物が結構あり、ハルナは若干顔をしかめてパッケージを見直していた。

一言で言えば味が濃く大味なのだ。


「海外だと日本人の舌にも合わない料理も多いと聞きますが。」

「そういえば横島さんがアメリカのケーキは派手で砂糖の量が全然違うって言うてたわ。」

ぶっちゃけ少女達は横島の影響でかなり美食になっているので、いわゆるアメリカの典型的なお菓子はあまり口に合わない物があるらしい。

まあ海外の料理に関しては事前に口に合わないこともあると聞いていたので覚悟していたが、まさか市販のスナック菓子やチョコレート菓子まで合わないとは思わなかったようだ。


「アメリカ人が太る訳だわ。」

「これも想い出になりますよ。」

実際のところ不味いとまで言うほどでもなく食べられないほどでもないが、少女達はこんなの毎日食べてればそりゃ太る訳だと妙な納得をしてしまう。


「さよちゃん幽霊だから太らないんだっけ?」

ちなみにそんな中で割と気にしないで食べていたのは太る心配のないさよである。

木乃香達がなんとなく手が延びなくなったお菓子を一人で勿体ないと食べていく。


「よく考えると幽霊でも人と変わらず生活出来てるというのは凄いですね。 それが普及したらお葬式がパーティにでも変わるような……。」

「実は私もよく知らないんですよ。 横島さんが一瞬でパッとこの姿にしてくれたので。 一応秘密にしてとは言われてたんですが……。」

太る心配がないさよがちょっと羨ましい木乃香達だが、夕映は改めてさよの異質さというか凄さを感じていた。

昔おキヌが横島に大丈夫死んでも生きられますと言ったが、まさにその言葉通りであり生きてる人間との違いが身近な木乃香達ですら分からない。

そんな生と死の概念を覆すさよだが、本人は若干天然が入っているので細かいところは気にしてない。


「魔法の正体を聞くと幻の大魔法とかだったりして。」

「大魔法というか一般的に私達の世界である魔法ではないと思いますよ。 多分横島さんの世界でも一般的な魔法ではないと思いますし。」

まあ木乃香達も別にさよの秘密を暴く気はなく横島のことだから何気なく大魔法でも使ってそうだと明日菜が冗談っぽく言うと、のどかは当たらずとも遠からずと感じたようで一般的な魔法ではないだろうと口にする。

夕映共々のどかは自分達の世界の魔法について勉強していたが、少なくとも二人が勉強した限りではそんな魔法は影も形もない。


「この姿だと空も飛べませんし壁抜けも出来ないんですよね。 横島さんは慣れて修行すれば出来るとは言ってたんですが、別に必要ないかなって。」

最早自身では幽霊だと証明すら出来ないさよに木乃香達は思わず笑ってしまうが、さよのこんなちょっと天然が入っていて細かいことを気にしない性格が横島と合うのだろうなと思う。

まさか神霊というちょっと格の高い幽霊だとは誰一人気付かぬまま、少女達のおしゃべりは別の話題へと移っていく。


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