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二年目の春・3

一方麻帆良の横島達はしばらくハニワ兵達の作業を見守っていたが、ハニワ兵以外は横島を含めて全員日付が変わる前に帰っていた。

横島と茶々丸はともかく近右衛門と刀子は明日も仕事があるので徹夜など出来ないこともあるし、横島はハニワ兵達を信頼しているので不測の事態でもなければ問題はないだろうと現場をハニワ兵達人任せることにしている。


「ほう、茶々丸の妹か。」

「ボディの調査と稼働テストに加えて、AIが制限付きだったからそこを直すのに二三日ってとこかな。」

横島と茶々丸は横島宅に戻ってようやく一日の疲れを癒していたが、エヴァは茶々丸に妹が出来たと聞くと少し興味があるようで横島の説明に耳を傾けていた。

超鈴音の拠点から押収したデータの中には先の新型ボディの詳細なデータもあり調査自体ははさほど時間はかからないものの、肝心の人工知能と言えるAIは思考や行動のプログラムに制限があったり感情プログラムが凍結されていたりとそのままでは使えなかった。


「どうも茶々丸ちゃんが離れたから急遽組み立てたボディらしくってな。 稼働テストもまだしてない未完成品らしくってそっちもしなきゃならんからさ。」

加えて新型ボディは稼働テストすら満足にしてない機体のようで、今回修学旅行前に茶々丸が反旗を翻したことから急遽組み立てたテスト機体そのものらしい。

ぶっちゃけ調査よりもこの稼働テストとAIの改良が手間といえば手間だった。

まあ稼働テストの方はハニワ兵の研究者に頼み、横島自身は茶々丸のAIを参考に彼女達のAIの改良をすることにしたらしいが。


「後は多いのは戦闘用アンドロイドの量産型の部品が山ほどあったな。 一応麻帆良での計画は非殺傷設定みたいだけど。」

「中途半端な計画だな。 それとも無血革命でも気どったか? だが結局は奴もなるべく自らの手は汚したくないだけにしかみえんがな。」

その後横島はタマモを膝の上に乗せて押収した物や超鈴音が計画していたそれの使い道なんかを愚痴るように話すが、エヴァはあまり詳しく聞いてなかった超鈴音計画を聞くと冷たく突き放すように中途半端だと言い切る。

可能な限り血を流さずに歴史を変えて未来を変えることが目的なのは考えるまでもないが、エヴァはそんな超鈴音の心の奥底には自らの手を汚したくないという個人的な本音があるようにしか見えないようだった。

それはある意味人間ならば当然の本音だろうし未成年の子供なのだからおかしいことではない。


「そもそも俺には超さんが上手くやれるとは思えんが。 混乱する二つの世界をどう自分の望むようにコントロールする気だ? 麻帆良での計画もそうだけど考えが甘いとしか思えん。 超さんの能力と手札で世界をコントロールするなんて土偶羅でも無理だぞ。」

そんなエヴァの意見に横島は賛同しつつも根本的な問題としての超鈴音の計画の見通しの甘さに相変わらず首を傾げずには居られなかった。

歴史知識という切り札があるとはいえ、それがどこまで詳細かなどたかが知れている。

金と情報にアンドロイドの兵で世界をコントロールするなど出来るはずがないのは、土偶羅の日頃の膨大な仕事をある程度でも理解していれば横島にだってわかることだ。

単純に言って世界を思い通りにコントロールするなど土偶羅も神魔の最高指導者とて不可能だった。

まあ暗殺や洗脳などの非合法な手段を出し惜しみなく用いれば、ある程度世界の流れをコントロールすることは必ずしも不可能ではないが。

ただそれとてやり過ぎればろくな結果にならないのは目に見えている。

まして有史以来、光りと影のように争い数百年も一般に隠されて来た魔法なんかを公開して上手く行くはずがなかった。

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