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二年目の春・3

「おっ、サンキュー。」

地下の倉庫に集まったハニワ兵の部隊はすぐさま土偶羅の本体による空間転送にて目的の超鈴音の拠点に乗り込むことになるが、横島達は倉庫でモニター越しにハニワ兵達を見守るくらいしかすることがなかった。

優秀なハニワ兵達なだけに下手に横島達が一緒に行けば邪魔になる可能性すらあるので、後方支援要員のハニワ兵達二十体と共にハニワ兵達が拠点に入るのを見守る。

なお後方支援要員のハニワ兵達は横島達が座って見守る為の仮設のテーブルや椅子はもちろんのこと、押収品の調査と分別などを行う作業台なんかも用意していた。

しかも軽トラサイズの異空間アジト製軍用フィールドキッチンまで持って来ていて、何体かのハニワ兵が横島達に飲み物を持って来たりハニワ兵達の夜食を作ったりしている。


「何から何まで用意がいいわね。」

なんというか刀子はハニワ兵には慣れてるとはいえ、今日のハニワ兵達はひと味違う様子で自衛隊や軍でも見てるようであった。

実際彼らは久し振りの本格的な任務に燃えていると言ってもよく、日頃の訓練の成果を出すんだとやる気に満ちている。


「しかし、麻帆良内に拠点を作られるとは今後はいろいろ考えんといかんのう。」

一方近右衛門はそもそもの問題として麻帆良内にテロリストとも言える存在に拠点を作られたこと自体を反省していた。

超鈴音の計画の良し悪しはともかくとして、麻帆良内に勝手に拠点を作られたのは明らかな近右衛門の失策なのだ。

元々情報収集目的の工作員なんかは拠点と言えるか微妙なレベルだが、麻帆良内に在住して店なんかを営んでる者もいる。

基本的に危険性がないと放置していたし、今までは工作員なんかがやらかすのは機密の奪取くらいで革命のようなテロをやろうとしたのは超鈴音が初めてだった。

そういう意味では今回は上手く乗りきれたが今後に多くの課題を残したと言える。


「そういや、超さんが計画で使おうとした大型の鬼神ってなんなんっすか?」

「うむ、あれはこの地下施設と同じくメガロメセンブリアが遺した鬼神兵と言う遺物でな。」

まあ麻帆良内の警備や外部の人の状況把握などは今後考えるとして、横島はふと超鈴音の計画にあった大型の鬼神のことを近右衛門に尋ねていた。

地下の最下層に大型の鬼神が封印されてるのは横島もかなり前から土偶羅の報告で聞いていたが、それが何なのかまでは知らないというかあまり興味もなかったらしい。


「ああ、向こうの戦争で使ってたやつか。」

「型式は古いので幾分パワーはないがあれだけでかなりの戦力になるじゃろう。 メガロメセンブリアの者達は基本的に現地の人間というか向こうの言い方で言う旧世界の人間をあまり信用しとらんかったからな。」

近右衛門もまさかメガロメセンブリアの連中が二十年前に麻帆良を離れる際に持ち去ることが出来ずに封印して行った鬼神兵を、超鈴音が機械で制御して使うつもりだったとはと複雑そうな表情を見せる。

本来の鬼神兵は麻帆良を守る最終兵器のようなものでメガロメセンブリアは制御魔法を含めた運用方法は秘匿していたが、麻帆良にはメガロメセンブリアに反旗を翻したメガロメセンブリア出身の元幹部も居てその人物から一通り運用方法は聞いてはいた。

ただまああんな馬鹿でかい鬼神兵では試しに動かすことも出来ないので、実質動かした経験があるのは先の人物だけである。

正直麻帆良のような人口密集地域ではあんなデカイ図体の鬼神など使った時点で負けが決定したようなものであり、戦略的には抑止力の見せ札くらいにしか使い道がないとも言えた。

近右衛門も頭の片隅に置いておいた程度で言われなければ忘れても問題ないレベルの扱いしかしてなかった。


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