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二年目の春・3

同じ頃、横島は早くも働きに来た茶々丸と共にのんびりと店を営業していた。


「これで超鈴音も終わりか。 まさか奴も居ない間に空き巣の如く拠点を制圧されるとは思っていまい。」

茶々丸と共に朝から店に来ていた大人バージョンのエヴァは、あまりに静かな超鈴音の計画の終わりに少しだけ同情するような表情を浮かべる。

間違いなく超鈴音は留守中に近右衛門が拠点の制圧までするとは予測してなく、それもそのはずで本来の近右衛門ならば突然そんな強行策に出るはずがないのも確かだろう。

魔法世界の限界と魔法の強制公開の双方を知らなければ茶々丸がいかに騒いだところで、近右衛門の性格ならばまずは超と話し合おうとするのが本来の行動のはずだった。

ならばこそ核心部を隠しながらのらりくらりと交わして麻帆良祭まで引っ張るつもりだったのだから。


「学園長先生も超さんを甘く見る気はないみたいだからな。 実際下手に足掻かれても面倒だし。」

そんな超の予想と思惑を全部ぶち壊したのはもちろん横島だが決断したのは近右衛門でもある。

明日菜の正体と膨大な未来知識を持つ彼女を野に放つのはあまりに危険であり、動く以上は未来に関する痕跡は可能な限り消すつもりで徹底していた。

ちなみにハニワ兵が実際に動くのは万が一にも人目につかない夜からになる予定で、空き巣というか夜逃げのように深夜にオーバーテクノロジー関連の物を押収する予定になっている。


「結局奴は未来の知識に振り回されたのが敗因だな。 最も望まぬ形での終わりとは。」

正直エヴァとすれば未来世界や魔法世界がどうなろうが本当に興味がないので完全に他人事だが、超鈴音は未来知識があったが故にここまでやれたが同時に未来知識のせいで判断を誤ったのだとも思うらしい。

未来世界と変えねばならぬ歴史の狭間で超は超なりに悩みに悩みぬいた結論だったのだろうが、彼女を狂わせたのは横島という歴史にない存在なのだから本当に未来知識に翻弄されたとも言えるだろう。


「未来の知識ですか?」

「奴にとってやはりここは過去にしか見えなかったということだ。 だがここは奴の過去ではない。 横島やお前をきちんと見てれば奴にだって別の選択肢が出たはずだからな。」

そんなエヴァの考えにオーバーテクノロジーの申し子ともいえる茶々丸は少し意味を理解できなかったのか不思議そうな表情をするも、エヴァは超には何度も他の選択肢に移るチャンスがあったと考えている。

非常識が服を着てるような横島や横島の影響で変わりゆく少女達を超は見ていたはずなのだ。

それを過去の存在だと見ずに目の前の現実として見てればと思うのは至極当然のことだろう。


そこまで茶々丸に説明したエヴァはお手伝いを終えて隣にやって来たタマモに自然な笑みを見せて密かに考え込む。

もしかすれば自分も超鈴音と同じく目の前の現実を見ずに居れば、今も呪われた身で孤独の中に居たのかもしれないと。

何がキッカケだと確かに言い切れるものはないが、一つ言えるのはいつの間にか自分の周りに入り込んできた横島やタマモのおかげだと思う。

当たり前のように甘え笑顔を見せるタマモのおかげでエヴァは自分の中の負の感情が消えてなくなるような気がした。

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