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その二

「すぐに人狼の里に行こう」

二人の話を聞いた横島と魔鈴は、急いで着替え出かける支度をする


「私達とジロウさんで向かいます。 二人は待ってて下さい」

一緒に着いて行こうとしている二人に、魔鈴は待ってるように告げた


「拙者も行くでござる!」

「私も行くわ」

しかし、シロもタマモも簡単には引き下がらない

緊急事態なのは二人が一番感じているのだ

戦力にはならなくても、邪魔にならない自信はあった


「ダメだ! お前達二人をGSの仕事に関わらせるつもりはない!」

珍しく強い口調で言い切る横島に、二人は無言になる


「先生……」

すがるようにシロが見つめても、横島は変わらない


「私達を信じて待っていて下さい」

少し困った表情の魔鈴は二人に優しく語りかけ、ジロウを含めた三人は急いで人狼の里に転移して行った



「これは……、血の臭い」

転移した瞬間、ジロウの表情が険しくなりつぶやく


「行きましょう!」

結界の入口まで血の臭いがしてると言うことは、一人や二人ではない可能性がある

横島達は、焦って結界の中へ向かう


「長老!!」

横島達が結界を入ってすぐの場所で見つけたのは、倒れた長老だった


「動かさないで!」

長老に駆け寄り体を起こそうとしたジロウを、魔鈴が止めた

意識は無く、間違っても軽傷でないのは辺りに流れてる血の量でわかる

間違って動かして死ねば文珠でも助からない


「まずいな…」

横島は意識下から文珠を出すと、慌てて長老の治療を始める

【完】【全】【治】【癒】

四文字も使う治療など、横島ですら使ったことが無い

しかし、長老の様子はそれほど危ない様子であった


キィィーン!!


文珠が作動して光が長老を包むと、全身に付いた傷痕が綺麗にふさがる


「間に合った…」

文珠が作動したことにホッと一息つく横島と魔鈴だが、事態は更に深刻だった


「横島、他にもたくさん倒れてるぞ!」

突然開いた心眼が告げた言葉に、横島達は険しい表情で走り出す


「犬飼は何処だ!!」

怒りの篭った横島の言葉に心眼とジロウは犬飼を探す
 
「犬飼、とうとう堕ちるとこまで堕ちたか…」

怒り心頭のジロウだが、元仲間への複雑な思いも同時に見え隠れしていた


「入れ違いだったようだな… すでに里の内部には居ない。 それよりも怪我人が多すぎるぞ」

心眼の言葉にやり場の無い怒りを感じる横島と魔鈴だが、一刻の猶予もならない

集落ではざっと見ただけでも、10人の人狼の若者が倒れている


「時間が無い。 文珠を使って手分けして治療をしよう。 ジロウさんは怪我が軽い人を治療して下さい」

横島は文珠を意識下から大量に出して、無造作に魔鈴とジロウに渡す

横島がジロウに軽い怪我人を治療するように言ったのは、ジロウでは文珠を一つしか使えないのだ


文珠の使い方は教えてはいたが、複数使用までは教えて無い

複数使用は誰でも可能だが、イメージと霊力コントロールのバランスが必要であり、慣れるまで練習が必要であった


「わかった」

ジロウは頷いて倒れた仲間の元に走って行き、同時に横島と魔鈴も手分けして重傷者から次々に文珠で治療して行く

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