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その二

一方時間は少し戻って令子に逃げられた犬飼は、下水道を通っていったんその場を離れたのだが、再び令子と戦った場所を遠くから見張っていた


「犬塚…、やはり追って来たか。 しかもあの二人と一緒だとは……」

自分を探しているなら、令子か仲間が必ず戦った場所を調べにくると思った犬飼は、密かに誰が来るのか見張っていたのだ

そんな犬飼もジロウと横島達が共に探しに来たのには、やはり驚いている


「さっきの女も罠か?」

横島達とジロウが共に居るのを見た犬飼は、令子が戦わずにすぐに逃げたのも罠かと疑っていた


「どちらにしても迂闊に手が出せんな… あの男の霊刀もかなり危険だったし、女は不思議な術を使う」

このまま調べに来た人を尾行して令子を斬ろうと考えてた犬飼だが、横島達とジロウの相手を同時にするのは危険だと判断してその場を離れていく

結局その日は、犬飼の犠牲者は出なかった



それから一週間後、横島達の予想に反して令子はまだ犬飼に襲われてない

六道家に避難していたおキヌも、さすがにずっと世話になる訳にはいかずに今日から事務所に戻っている

そんな状況を横島達は不思議に思うが、あの日以来犬飼の行方が掴めないのだ


「参ったな… なんで犬飼は現れないんだ?」

困ったように悩む横島、満月が来る前に勝負を付けたいのだが、全く行方が掴めないのではどうしようもない


あの日以来、犬飼は人斬りも止めている

従って全く新しい情報も無く、膠着状態のまま日にちだけが過ぎていた


「人斬りも止めてしまいましたし、美神さんも狙われてない。 まさか諦めた訳では無いでしょうが…」

諦めて山に帰ってほしいと微かな希望を持つ魔鈴だが、相手がそんな簡単に諦めないことは理解している


「やはり満月を待っておるのだろうな… 一度横島と魔鈴に負けてるからのう。 人間を警戒しているのかもしれん」

カオスもシロやジロウの協力の元、犬飼の行動予測をしているがイマイチ掴めないでいた


「嫌な予感がするわ… 何か見逃してる気がする」

じっと意見を聞いていたタマモは、言いようの無い嫌な予感をヒシヒシと感じていた

そしてタマモの嫌な予感は、横島達の予想もしない形で当たることになる
 
 
一方西条と唐巣を中心にした犬飼対策のメンバーは、この一週間犬飼を捜索しながらフェンリル対策に頭を悩ませていた


「やっぱりアルテミスを呼び出すしかないんじゃないの?」

この数日文献や伝説を調べなおした一同だが、たいした収穫は無かったのだ

人狼族の守護神である女神アルテミスを召喚して、ジロウに力を貸して貰おうと言うのが現行の最有力作戦である


一応横島達には対フェンリルの作戦が別にあるのだが、もちろん言ってない

必要以上に自分達の秘密を曝すつもりはないのだ


「うむ…、神族に助けを求めるにしても情報が不確定すぎて無理だしな。 一応アルテミス召喚魔法陣は書いた方がいいな」

悩む西条だが、不確かなフェンリルの情報を無闇に広めて問題を大きく出来ない理由もあった

万が一フェンリルが現れなかった場合の問題も大きいのだ

偽の情報で神族を動かしたなどとなれば、西条の首では済まない


結局、人狼族が中心となり戦うようにするしか方法が無いのだった



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