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二年目の春・3

「止まらんか。」

仮に横島が話しても超鈴音は止まらないと語る茶々丸の言葉に近右衛門は言葉が途切れてしまう。


「未来世界を救う為に過去に来た勇者様だからな。 超さんは。」

「そう? 私には自分の勝手な理想を力で押し付けようとする西洋魔法使いと同じにしか思えないわ。 もし仮に未来の彼女の敵対勢力までもが時間移動に気付いて同じようにこの時代に来たらどうするの? 私達の人生は未来の人間のオモチャじゃないわ。」

言葉が続かぬ近右衛門に代わり再び横島が超鈴音の皮肉な立場を口にするが、それに真っ向から反論したのはずっと無言だった刀子である。

近右衛門も居るので黙って居たかったようだが、近右衛門と横島があまりに超鈴音に甘いというか肩入れしてる現状に不満を感じていたのはエヴァだけではない。

超鈴音の考えはあくまで未来を基軸としたものなので、この時代の人間からすると理解出来るものではないのだ。

まして魔法の秘匿などの魔法使いと非魔法使いの歪んだ現状は西洋魔法使いとヨーロッパ白人の歴史が原因であり、関東魔法協会も日本人も関係ない話である。

やるならどっか他でやってくれと言うのが刀子の本音なのだろう。


「どのみち超君の計画を認める訳にはいかんからな。 決断の時なのじゃろう。 超君は言葉では止まらぬと言ったのならば仕方ない。 彼女と葉加瀬君が麻帆良に居ない修学旅行中に彼女達の研究室や拠点を抑えるというのはどうじゃ? 超君達には魔法協会の情報への不正アクセスという容疑もあるでな。」

刀子が意見を口にして残るは高畑のみだが彼は最後まで口を挟むつもりはないらしく、近右衛門はそんな高畑と今日の話し合いの主役とも言える茶々丸を見ると超鈴音に対する決断をした。

超鈴音は未来を託せる者を見極める為にも戦いによる結末を望んでいるのだろうが、近右衛門は武力での制圧などする気も必要もない。

幸いなことに土偶羅の協力により超と葉加瀬には魔法協会の情報への不正アクセスから立ち入り禁止区域への無断侵入など、麻帆良内ならば超の研究室や拠点に立ち入り調査するだけの容疑もある。

元々超鈴音は横島と同じく魔法協会外の協力者であり、魔法関連の情報など魔法協会から得ていた過去もあるので裏の問題として表とは無関係に動く大義名分はあった。

まあ近右衛門は超鈴音の問題は魔法協会にも記録は残せないと考えているので、一部の信頼出来る者達で全て片づけるつもりだが。


「超さんと葉加瀬さんはどうなるのでしょう?」

「一応弁明の機会は与えるが、最終的には記憶の消去も含めた厳罰処分を検討せねばなるまい。 超君はタイムマシンで未来に帰るならば止めはせんよ。 葉加瀬君は記憶の消去をした上で監視下に置く程度が落としどころか。」

そんな近右衛門の方針に茶々丸は少し驚くも異議を挟むことなく超と葉加瀬の処遇を尋ねた。

客観的に考えてもすでに時間移動までして法の判断の限界を超えたことをしている彼女に対して計画が始まるまで待つ必要はなく、下手に騒がれる可能性が低い修学旅行期間中に動くという近右衛門の決断は悪くはない。


「どうか、二人の命だけは……。」

「分かっておる。 未成年じゃしのう。 命までは取らんよ。」

ただ茶々丸は正直なところ超と葉加瀬の命が奪われるのだけは止めたいと思いそれだけは避けて欲しいと近右衛門に嘆願するも、元々近右衛門もそこまではする気はないのでそこはきちんと明言する。

最終的に近右衛門の方針に反対意見が出ないことで近右衛門は修学旅行期間中に超の計画を止めることにするが、茶々丸は少しでも超や葉加瀬の減刑になればと自ら協力を買って出ることにした。


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