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二年目の春・3

「みんな、あたらしいかぞくだよ。」

停電の翌日は少し肌寒いが天気のいい朝だった。

タマモは元々一緒に暮らしている普通のハニワ兵と新しい家族となる白ハニワ兵を連れて、庭の猫達や水槽の金魚に会わせて新たな家族として紹介して歩いていた。

白ハニワ兵は現状ではハニワ兵としての基礎知識や基礎技術は与えられてはいるが、あくまでも与えられた知識や技術であり見るもの全てが新鮮に感じるらしく楽しげにキョロキョロとしている。


「しらないひとにうごいてるところをみられたらだめだよ。」

今度は自分がお母さんだと張り切るタマモは、そんな好奇心旺盛なハニワ兵にきちんと麻帆良での約束事を教えなきゃと張り切ってもいた。

ちなみにハニワ兵の意思疏通の手段である思念をタマモはなんとなくニュアンスは感じることが出来るものの、具体的な会話を理解できるほどではない。

従って細かい返事が必要な時は他のハニワ兵同様にスケッチブックに字を書いて会話している。

ただまあ日常的な会話に不便なほどでもないので、あれこれと興味を持つ白ハニワ兵にタマモは一つ一つ自分の知る範囲で教えて歩いていたが。


「おっ、どうした?」

そのまま庭と二階を案内し終えたタマモは三人で一階の厨房に来ていた。


「しろはにくんにおしごとみせてあげるの。」

「そっか。 火には気を付けろよ。」

どうもタマモは白ハニワ兵に家の仕事を教えてあげようとしたらしく、時間的にちょうど朝の混雑が終わった厨房からこっそり店内を見せたり厨房で料理をする横島を見せたりしていく。

白ハニワ兵は当然料理をする様子を見るのも初めてなので一つ一つの食材から料理をする横島も興味深げにみているが、途中で食べたくなったらしく料理を食べたそうに横島をじっと見つめる。


「とりあえずちょっとずつ味見するか?」

料理自体は異空間アジトの誕生パーティなどでいろいろ食べたが、どうも白ハニワ兵は食べるのが好きなハニワ兵のようで美味しい美味しいとバクバクと食べていたのだ。

横島はそんな白ハニワ兵の熱い視線に思わず吹き出すように笑ってしまうと、注文された料理を少しずつ多く作り二人のハニワ兵と何故かタマモにまで味見させていく。


「ぽー!!!」

一口食べる事にガーンと衝撃を受けたように驚き料理を食べる白ハニワ兵に、タマモも何故か真似し出すと元々のハニワ兵も加えてリアクションを競うようにいろいろな料理を味見して行った。

ちなみにこの日の日替わりメニューはピザトーストで、雪広グループで使われている業務用ピザソースを横島が少しアレンジした物を具材と共に厚めのパンに乗せて焼くだけのお手軽メニューだったが、三人は熱々のピザトーストをアチチと火傷しそうになりながら美味しそうに頬張ってもいる。


「タマモ、お昼ご飯食えるか?」

「うん! たべれるよ!」

結局三人は味見の範囲を越えるほどあれこれと食べていくが、タマモはそれでもお昼ご飯は食べるとこんもりと膨れたお腹を張って言い切り横島を笑わせていた。

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