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母からの伝言

次の朝、美神事務所では少し疲れた表情の令子が幼い自分を見てため息をついている

基本的に世話はおキヌに任せた令子だったが、流石に夜くらいは自分が寝かしつけないとダメだと考えたのが失敗の始まりだった

昨日の昼たくさん寝た影響からか、幼い令子がなかなか眠らずに苦労したらしい


「おキヌちゃんよく平気ね」

「子供はこのくらい元気な方が楽しいですよ」

僅か一夜でストレスを抱えてしまった令子と対照的におキヌはあまりストレスを感じた様子もなく、どちらかといえば楽しいと感じてるようだ


(記憶を失ってもおキヌちゃんはおキヌちゃんなのね)

元々おキヌは横島と同様に子供好きなのである

三百年前も孤児を世話していたらしいし、子供の世話は手慣れたものであった

横島が居ない影響も無くはないが、ここではおキヌがその分頑張っている


「私は事情を調べた方がいいみたいね」

おキヌが幼い令子と楽しそうに遊ぶ姿を見た令子は、少し憂鬱そうな表情を見せると東都大に電話をして父親である公彦と連絡を取ろうとしていた


「美神さんのお父さん居たんですね……」

何故かトゲトゲしい口調で電話する令子におキヌは少し驚いた表情を見せる

母親の話は昨日聞いたが同じ時に名前すら出なかった為に、すでに居ないものだと思っていたようだ


「私は東都大に行って来るわ」

東都大に電話をした令子だが結局父親は日本には居なく、助手が令子から連絡が来た時に渡すように頼まれた物があっただけである

令子はそれが手がかりなのだろうと直感的に気付き、東都大に出かけることにしていた

ちなみに出かける間際に幼い令子が一緒に行くと言い出したり、ハーピーが侵入しようとしたことを人工幽霊が報告したりといろいろあったが、この辺りは未来と変わりなく令子が一人で出かけて行く



一方この日の横島だが、なんと普通に学校で授業を受けていた

実は今日横島がどうするかは魔鈴やカオスも含めて随分と考えたのだが、結局何も関係がないように行動するのが一番だろうとの結論に達している

まあ美智恵が相手ならば横島達が未来を知っていると気付くのは時間の問題ではあるが、出来るだけ偽装して気付かれるのを遅らせるのは必要だった

実際ハーピーが相手ならば魔鈴と雪之丞で十分対応出来ることから、横島は普通に学校に居たのだ


「ピート君、新しい子が来たわよ」

そんなこの日横島だったが、最近恒例になりつつあるピートへの女子からの弁当の差し入れを見て昔を懐かしんでいた

かつて冗談抜きでピートへの差し入れの弁当が横島の生命線だった時期があるだけに、思わず昔の記憶が蘇ってくる

あの頃はピートや女の子に悪いことをしたなと今更ながらに思う横島は、やはり自分はもう高校生ではないのだと改めて感じてしまう


(それにしても……)

ただあの頃は感じなかった教室の空気を今の横島は感じていた

女子はあまり気にしてないが、一部男子がピートに嫉妬めいた視線を向けてることに横島は今更気付いている



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