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二年目の春・2

「うわぁ……。」

「倒れないのでしょうか?」

タマモの珍しいお願いから雪ハニワをハニワ兵に生まれ変わらせることにした横島であるが、その瞬間をぜひ見たいという少女達のリクエストにより夕食後に急遽その場に居た全員で異空間アジトに行くことになった。

クーラーボックスに氷と雪ハニワを入れた一行は異空間アジトに行くと、そのまま転移場から瞬間移動で向かったのは南極の異空間にあるバベルの塔である。

首が痛くなるほど見上げてもてっぺんが見えないバベルの塔に来たのが始めてだったこともあり、少女達は改めて横島が普通じゃないと感じる。

まあ特に緊張感なんかはなくさよなんかは塔が倒れないか心配をしていたが。


「なんなんですか、ここは?」

「元々はアシュタロスの研究施設だよ。」

中に入るとまるで工場見学に来た学生のように周囲をキョロキョロと見渡す少女達であるが、結局は中も移動は瞬間移動なのであっという間に目的の部屋に到着する。

実は一般的なハニワ兵はここではない専用の施設で一から産み出されるのだが、今回は雪を核としてハニワ兵を産み出すのでこちらに来ていた。

ここはアシュタロスの元研究施設の一つで、横島が以前何度か使ったことがある部屋になる。

この部屋にあるのはほぼ人間界の物ではないので魔族特有の毒々しい部屋と施設に、さすがに少々怖いと言いたげな少女もいるが。


「さて、こいつをここに入れてスイッチを押せば。」

横島はそんな少女達が見守る中で雪ハニワを電子レンジくらいの箱に入れると、魔族文字で書かれたパソコンのような物を起動する。

すると部屋の中の幾つかの得たいの知れない物が不気味な光や音がし出して少女達は更に表情を曇らせるが、次の瞬間には全てがぶち壊しになるようなことが起きて表情を一変させることになる。


《チン!》

それは少女達もよく聞く馴染み深い電子レンジの音そのものだった。


「どうだ? 調子は?」

「ぽー!」

不気味さも恐怖も一変するような馴染み深い音に少女達はしばしポカーンとしてしまうが、その間に雪ハニワを入れた箱が勝手に開くと中から白いハニワ兵が姿を表す。

現れた白いハニワ兵はキョロキョロと横島や少女達を見つめると始めましてと言わんばかりに、短い右手をシュタっと上げて挨拶をしてラジオ体操のように体を動かして確認をする。


「なんで最後だけチンなのよ!」

「いや俺に言われても。 この部屋の機材は基本的にアシュタロスが作ったもんだから。 俺は流用したに過ぎないし。」

しばし体を動かしたハニワ兵は問題ないと返事をするとそのままタマモの元に駆け寄り、嬉しそうにタマモの掌に乗った。

どうも自分の産みの親がタマモだと白いハニワ兵は理解してるらしく、タマモをお母さんと呼んでいるが生憎と横島以外は理解できてない。

一方我に返った少女達のうち何人かはあまりに不釣り合いな最後のチンがお気に召さなかったのか、突っ込むように抗議をするも横島も別に自分で作ったシステムではないので困り顔だ。


「へー、白いハニワさんなんだね。 って冷たい!?」

「どうも属性持ちのハニワ兵になったみたいだな。 耐性はあるから溶けないだろうが、好きなのは暑いより寒い方か。」

そして新たに雪から生まれた白いハニワ兵だが、どうやら冷たい属性持ちのハニワ兵らしくボディがヒンヤリとしている。

触れないほどではないし触っていても問題ないレベルの冷たさだが、白いハニワ兵いわく暑いよりは寒い方が好きらしい。

一応ハニワ兵は温度耐性の幅がかなり広いので暑さでダメになる訳ではないのだが。


「みんなかぞくだよ。」

ちなみにタマモは雪ハニワが本当の家族になったことが本当に嬉しいらしく、横島やさよは元より少女達も家族だからと言い一人一人を紹介していく。

どうもタマモの区分けでは自分と少女達はすでに家族らしい。

まあ狐的な価値観が若干加わった家族だろうが。






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