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二年目の春・2

「夜間訓練ですか? 知ってはいますが、私達は行く予定はありませんよ。」

同じ日夕映とのどかはこの日の夜に行われる魔法協会の特殊訓練の話を古菲としていた。

麻帆良市全域が停電する今夜は公共機関や病院などを除くほぼ全てが活動を停止するので夜間の集団訓練があるらしい。

有事を想定した夜間の集団戦闘の訓練や一般人及び非戦闘員の避難誘導や緊急時における対処訓練など行われていて、他にも非戦闘員は後方支援要員として炊き出しや応急措置の訓練などが行われる。

麻帆良学園でも一般の学校や自治体と同じく防災訓練などをしているが、魔法協会の訓練は完全に有事を想定した訓練でありそれらの訓練とは意味合いが違う。

基本的に魔法協会員は参加要請があり外部協力者にも可能ならば参加をして欲しいと求めてはいるが、参加率は正直さほど高くはないし横島達は立場が特殊なので近右衛門から直接話が無ければ基本参加する必要はないが。


「そうアルか。 マスターの実力を見れると思って楽しみにしていたアルが。」

何故古菲が夕映とのどかにそんな話を尋ねたのかと言えば、どうも古菲は横島の実力が見たいらしく今夜の訓練に参加するか知りたかったらしい。


「でも有事の訓練って聞くとちょっと恐いね。」

「魔法協会は名目上は自衛権がありますからね。 左翼団体が聞いたら発狂しそうですが、自分の身は自分で守れと。 基本的に警察や自衛隊は魔法協会が狙われても動いてくれないようですから。」

古菲の場合は単純に強い奴に会いに行くだけで参加するらしいが、のどかは有事を想定した訓練と言うだけで少し恐いらしく表情が冴えない。

ただ魔法協会の有事は警察や自衛隊などの国家機関が手を出せないらしく、基本的に自主防衛が必要だとのこと。

まあ実際に関東魔法協会では二十年前の関西呪術協会との戦争も名目上は命令違反による逮捕であるため、正式に自衛権を発動したことはないが。

しかし世界を見渡せば国家がクーデターや革命などで変わる際に魔法協会も標的にされた結果自衛権を発動した例はあるにはあるが、魔法協会の規模で自衛権を発動するような相手から守りきれるはずもなく所属する魔法使いを逃がすだけで精一杯だったようではある。


「難しいことは分からないアルが、魔法使いとは戦ったことがないから楽しみネ。」

ちなみに古菲は夕映とのどかが雑談程度に話している有事関連の話の途中で理解するのを放棄したらしく、逆に魔法使いと戦える喜びを嬉々と語りあまりの脳筋っぷりに横島が古菲と豪徳寺達を避けていた理由を夕映とのどかは理解した。

まるで某アニメの戦闘民族のごとく思考のほとんどがバトルに片寄っているのだから、何をどうすればこんな人になるのだろうとまるで珍獣を見るような気分で見てしまう。

ただまあ彼女達は友人のハルナなんかが片寄った趣味を持ってることをよく見ている為に、特別珍しいと思う以上の偏見は持たなかったが。


それと余談だが近右衛門が訓練に横島達を呼ばなかった理由は横島の常軌を逸する実力を可能な限り人目に晒したくないからであり、戦い方自体もこの世界の魔法関係者と微妙に違うと高畑や刀子から聞いているからである。

魔法協会も必ずしも一枚岩とは言えないのでどこから情報が漏れるかは分からず、現状でも少なからず裏の世界で注目を集めている横島の扱いは慎重に慎重を重ねた結果だった。


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