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二年目の春・2

「どうも、こんばんは。」

この日の夜、横島は近衛邸に呼ばれていた。

相変わらず軽い横島はであるがこの日はめんどくさかったのか瞬間移動で来ているが、他の集まったメンバーも土偶羅による空間転送にて集まった雪広家と那波家の人々になる。


「さて揃ったことだし始めようかの。」

以前と違い土偶羅が空間転送で送り迎えできるようになった為か、最近は近衛邸での会合の回数が増えていた。

もちろん話し合うべき議題が多いという事情もあるが。


「私はやはり彼女に協力するのは反対だわ。 関われば泥沼の歴史に引きずり込まれるだけの気がするもの。」

横島自身は細かいことは土偶羅任せな為あまり近衛邸での会合には参加しないものの、この日は茶々丸と会う前に自分達の超鈴音に対する方針を最終決定する為に参加している。

この会合は横島の存在により事実上麻帆良の意思決定機関となりつつあり、魔法協会にも明かしたくない超鈴音の問題の始末はここで決めねばならない。

超鈴音の問題は随分いろいろ検討して来たが、真っ先に意見を口にしたのは千鶴の祖母である那波千鶴子だ。


「誰かが救わねば滅ぶ世界がありやる気のある若者がいる。 捨て置くには惜しいが、あの娘にそれが出来るかというのが問題か。」

この問題は以前から度々議論に上がったが、結局は超鈴音の器とやり方では魔法世界は救えても犠牲や争いを地球側にばらまくだけだというのがこの会合の意見となっている。

ただあやかの祖父の雪広清十郎はそれを理解してなお超鈴音の覚悟とやる気は買っており、言葉は悪いが彼女を魔法世界を救う英雄に仕立てあげられないかと考えていた。

仮に高畑のようにその可能性がほぼないならここまで悩まないのだが、近右衛門達と横島が裏から動けば彼女を英雄に祭り上げて世界を救うことも不可能ではないことがまた悩みどころとなる。


「言い方は悪いが所詮は十四の子供なんだよね。 仮に高畑君が彼女並の才覚があれば協力する価値はあるけど。」

「失敗したから未来に帰るってのも潔いってより無責任にしか見えないからな。」

それから続けて口を開いたのは雪広政樹と那波衛の現社長の二人だが彼らは超鈴音の能力や才覚は評価するも、超鈴音そのものはあまり評価してなく冷たい言い方をすれば子供の夢想にしか見えない。

何より彼らが問題視したのは成功したら残り失敗したら帰るという超鈴音の考え方だった。

散々過去を引っ掻き回してダメだったからサヨナラでは大人は納得出来ない。

協力するのはいいが勝手な自己満で途中で止められたら協力した自分達が後の責任を背負わねばならなくなるのだから、そんな勝手な子供に支援など出来ないというのが企業家の視点なのだろう。


「横島君はどうかね?」

「心情的には何とかしてやりたいですけどね。 超さんに魔法世界だけで解決する力がない以上は……。」

そして大人達が話をしていく中ずっと無言だった横島であるが基本的にあまり深く物事を考えるタイプではないので、日頃の会合ではあまり役に立たなかった。

近右衛門は麻帆良や地球側に損害を与えない条件で超鈴音を密かに支援し魔法世界の問題を解決出来ないかとの妥協案を探っていたが、客観的に見れば超鈴音を英雄にするくらいなら高畑の方がまだマシだとの意見がほとんどである。

そもそも彼女の生まれた未来はすでに確定しているので変わらない中、彼女がこの世界の為に命を賭けて世界を救うとは思えないのも致命的だった。

それでも近右衛門と横島は彼女にも何かしらの希望を与えられないかと悩むのだが。


「あの娘がこの世界で生きていく覚悟を決めぬ限り手は貸せんな。」

最終的に雪広家と那波家は超鈴音に対して魔法世界での活動に限定してでさえも協力出来ないと言い切る。


「わしも反対だ。 超鈴音の現実はここではないからな。」

結果としてここまで来ると近右衛門でも話の流れを変えられなく、後は横島が決断するしかないが横島もこの場に居る土偶羅の分体に視線を向けて反対されるとそれ以上強くは出れなかった。


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