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二年目の春・2

「くっそー! アニキは何処なんだ!!」

同じ頃、魔法世界のとある都市で一匹のオコジョが叫んでいた。

彼の名はアルベール・カモミール通称カモ。

ネギ・スプリングフィールドの相棒になるはずだったオコジョ妖精である。



「アニキの家族は誰も居ないしどうなってんだ?」

それは遡ること数週間前カモは下着ドロの罪で服役していたメルディアナの魔法協会にある牢から抜け出し脱獄していたのだが、そこは既に彼が知るメルディアナでは無くなっていた。

昨年の夏にネギの祖父が失脚して以来メルディアナの実権はメガロメセンブリアに握られていて、魔法協会は内部での権力争いやネギの去就の一件で失った地球側魔法協会の信頼回復の為の苦労などでメルディアナ自体がギスギスとした重い雰囲気に包まれている。

長年付き合いがあったヨーロッパの魔法協会や同じイギリス国内の他の魔法協会は多少なりとも交渉の余地があったが、麻帆良を初めとした反メガロメセンブリアの魔法協会や中立の魔法協会を含む大半の魔法協会は未だにメルディアナに冷たく交渉のテーブルにさえ着けない魔法協会もあった。

メルディアナでは一連の責任を問う声はネギの祖父が失脚後もなくならず、ネカネ・スプリングフィールドを初めとしたスプリングフィールド一族と彼らを慕い集まった多くの優秀な魔法使いが去っている。

ネギの祖父もその息子のナギもタイプは違うが人々に慕われていた二人で、メルディアナには二人を慕う多くの魔法使いがかつては居たのだ。

メルディアナの牢から脱獄したカモはてっきり魔法協会のトップがネギの祖父だろうと考え、孫のネギに取り入り協力することで下着ドロの罪と脱獄を恩赦という形でチャラにして貰おうとしたが脱獄してみたら誰も居ないので途方に暮れてしまう。

元々カモは同じオコジョ妖精仲間からも人間の下着ドロをするなど理解できない恥さらしだと嫌われていて頼る相手はすでになく、結果としてネギは祖父と魔法世界に渡ったとの微かな情報を頼りに魔法世界に自身も逃亡していた。

祖父の失脚ですでに恩赦の道は断たれたが、すでに仲間からもつま弾きにされていて妹にも半ば見捨てられているカモは他に頼れる存在が居ないのである。


「いったい何処に行けば……。」

ネギと一家の所在はメガロメセンブリアやヘラス帝国に地球側魔法協会の情報機関は掴んでいて監視してるところも多いが、カモのような個人掴める情報ではなくカモが掴んだ情報はネカネがネギと祖父を追い魔法世界に渡ると友人に言っていたとの不確定な情報しかない。

魔法世界では特にナギに息子が居た情報すら極秘情報として一般には隠されているので、カモは広い魔法世界をあてもなくさ迷うしか道はなかった。

幸いメルディアナでは下着ドロ程度の罪のカモを捕らえる為に人材を派遣する余裕はないので追っ手はないし、メガロメセンブリアや親メガロメセンブリアの勢力には手配書が一応出されたがたかが下着ドロには懸賞金もない上にオコジョ妖精は人間には区別が難しいので捕まる心配はほとんどないのが唯一の救いだが。


「新入り叫んでないでちゃんと働けよ。」

「がってんでさ!」

さてそんなカモは現在路銀が尽きてしまい、何故か魔法世界の辺境にある最近勢力が拡大してる運送会社で警備員の仕事をしていた。

カモ自身は戦闘力はないがオコジョ妖精ということで元傭兵などの戦闘要員と組んで後方支援担当として働いている。

もうお分かりだと思うが、カモは偶然にも土偶羅の分体が経営する運送会社で働いていた。




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