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二年目の春・2

魔法協会の新人研修が終わると四月も半ばに入り、今週には恒例の年二回のシステムメンテナンスの為の停電がある。

ただ横島も三度目の停電の日なので最早慣れていて特に気にしてなど居ないが。


「奴の息子か。 それほどとはな。」

そして月曜のこの日の午前中には大人バージョンのエヴァが店を訪れていて、甘い卵液と少し厚めのパンが香ばしく焼けた匂いが食欲をそそるフレンチトーストをナイフとフォークで優雅に食べていた。

元々西洋人であるエヴァは当たり前のことだがナイフとフォークの使い方が上手い。

美しい容姿と合間ってまるでフランス映画にでも出てくる王候貴族のお姫さまのような雰囲気がある。


「半分は運命に導かれた結果なんだろうな。」

その姿は横島も見惚れるほどでありこれが幻術の類いじゃなきゃなと若干失礼なことを考えているが、話題はなんとなく超鈴音の歴史になっていた。

彼女の歴史ではネギ・スプリングフィールドが麻帆良にやって来て、数日後の停電の際にはいろいろな制限がある中ではあるがその世界のエヴァに勝ったと教えると驚いているようである。


「運命か。 あまり好きな言葉ではないな。」

「俺は大嫌いだよ。 ただ時として世界に選ばれる奴ってのが現れちまうんだ。 その子供が客観的に見ても天性の才能があるのは確かだけどな。」

エヴァ自身はすでにナギへの興味が失せてるのか平行世界とはいえ自分が十才の子供に負けたと聞いてもアッサリと聞き流しているが、横島がその結果をネギの実力に運命がプラスアルファで作用したのだろうと告げると少し表情を歪めた。

横島もそうだがエヴァもまた長く生きてるだけに様々な経験を積んでいるのだろうし、理不尽な現実や運命のようなものを少なくとも何度か経験しているのだろう。


「運命に愛された血筋なのか、それとも運命に呪われた血筋なのか。」

ただ横島は元よりエヴァもまたあまり興味がないらしく正直暇潰しのゴシップ記事を読む程度の興味しかないが、この世界ではその子供が今は魔法世界で家族と幸せに暮らしていると聞くと無言のままその事実を受け止めていた。

現在進行形でナギに興味はないようだが、それでも一度は愛した男の息子なだけに平穏な生活で幸せだろうと横島が語ると悪い気はしないようである。


「問題はあの女か。」

「錦の御旗は強いからな。 どんな犠牲を出しても世界の為なんて言うと軽くなっちまう。 逆らえば逆賊ってか世界に仇なす魔王さまか?」

「今更だな。」

本来超鈴音が会いたかったのがネギである事実も横島は既にエヴァに教えていた。

超鈴音とすれば仮に自身の計画が失敗しても自分が生まれた未来にならないようにこの世界を託せる人物としてネギを選びたかったようだが、横島からすると彼女の存在が逆に破滅の未来にネギを導くような気がしてならない。

正直横島は世界の為などと自分の理想を正当化する人間は嫌いであり、少なくない親交がある超鈴音に自分から接触してない大きな理由になっている。

まあ横島は元々アシュタロス戦やその後の神魔戦争で世界の為になどと錦の御旗をかかげる身勝手な人間を嫌というほど見てきたからなのだが。

横島自身はかつて人類の敵だと言われたし令子は世界の為に殺されかけた訳だし。


「エヴァちゃんの名前であっちの世界救ったら面白くなるだろうな。 正義が好きな連中の正義と悪が逆転するんだから。」

「今度は魔王から神にでもされるか? 冗談でないわ。」

ただ横島もエヴァも世界を救うことを完全否定してる訳ではなく、問題なのはやり方なのだろう。

横島はここまで問題を放置している魔法世界の価値観をぶち壊したいという考えもあるらしく、一番効果的であろう魔法世界においての悪の象徴でもあるエヴァの名前で世界を救おうかと冗談を言うもエヴァは考えるまでもなく拒否していた。


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