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二年目の春・2

「タマちゃん、麻帆良祭でどんなことやりたい?」

そしてこの日の夕食時になると夕食が出来上がるのを待ちつつ少女達がタマモに麻帆良祭について改めて説明していた。

この日行われたホームルームでは相変わらず何も決まってないが、ホームルームに参加出来ないタマモの意見は早めに聞いておかねばならない。


「みんなといっしょにおみせやりたい!」

3ーAでは昨年のこともあり飲食系にするのがほぼ規定路線と考えられているが、そもそも麻帆良祭の出し物はジャンルも種類も一般的な学園祭とは桁が違う。

何かタマモならば新しい意見でもあるかと考えていた少女もいたが、タマモが即座に答えたのはやはりお店をやりたいとのごく普通の意見である。

毎日のように店の手伝いをして木乃香達と一緒に働いているタマモであるが、それでもまだお店がしたいのかと少女達は半ば不思議そうにタマモを見つめた。


「お店かぁ。 お店にもいろいろあるよね。 どんなお店がいいの?」

「うーん。」

ただタマモとしてはみんなと一緒にお祭りをしたいのであって極論を言えば中身は何でも良かったりする。


「ほら、こんな綺麗な服も……。」

「ダメです!」

「そうだよ。」

ちなみにハルナなんかはまだ諦めてないのかメイド服やメイド喫茶の雑誌を見せてタマモを味方に引き込もうとするも、夕映とのどかにブロックされてしまう。

実はハルナは時々タマモに怪しげなことを教えようとして木乃香達にブロックされることがあった。

流石にあまり過激なことを教えようとしてる訳ではないのだが、微妙に将来オタクに走りそうなことを教えようとして木乃香達によく怒られている。


「みんながたのしめるおみせがいい。」

そんなハルナと夕映とのどかの賑やかな様子を見て意味を理解してないタマモは素直に楽しそうだと笑顔を見せる。

なんというかハルナが暴走気味に何かを口走ったりして木乃香達が止める姿をよく見かけるタマモは、その様子が楽しそうに見えるらしい。

実際タマモは意味もわからずハルナと木乃香達の攻防戦に加わり一緒に騒ぐこともよくあるのだ。


「マスターは私の味方よね!」

そのまま明日菜と美砂達や千鶴達がタマモと相談する中、ハルナは厨房にいくと今度はメイド服を着た美少女の写真なんかを見せつつ横島を味方に付けようとする。

ニヤニヤと意味ありげに笑みを浮かべて分かってるからと言わんばかりの態度をするが、横島は話を聞いていた訳ではないので何がなんだかさっぱりな表情を浮かべる。


「いやハルナが麻帆良祭でメイド服や水着を着せようとするのですよ。」

「メイド服に水着? 俺は反対だ!」

妙に高いテンションのハルナはすでに横島は味方だと言いたげであるが、夕映とのどかが恥ずかしそうに説明すると横島は意外にも即断で反対する。


「なんで? マスターそういうの好きでしょう!!」

「いいか、ハルナちゃん。 そんなことしたらスケベな野郎どもを楽しませるだけだろうが。 中学生がそんなことしたらあかん!」

横島にしては常識的な返答に夕映とのどかは元よりハルナも驚きハルナは少々むきになって理由を聞くが、その答えは横島らしからぬものであった。

少々真面目な表情で断固として反対だと熱弁をふるう横島の言い分は正論とも言えるほどである。


「つまり自分が楽しむのは良くても人を楽しませるのは嫌だと?」

「……いや、そういう意味もあるようなないような。」

この時のどかとハルナに加えて横島と一緒に夕食を作っていた木乃香も横島を見直しそうになるが、少し疲れたような夕映が横島の真意にいち早く気付きそれを指摘すると横島はあからさまに動揺した態度で口ごもってしまう。

そもそも夕映は元より木乃香達も横島にそんな倫理観がないのは知っているのだから、よく考えると分かることなのだ。

ただし横島が反対した理由に独占欲が根底にあったことは夕映ですら気付かぬことだった。



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