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二年目の春・2

「さてさて、困ったのう。」

同じ日近右衛門は仕事の合間に先日横島から頼まれた茶々丸との話し合いについて考えていた。

茶々丸が一人でも超鈴音を止めようとしているとの事実に近右衛門は頼もしくも感じたが同時に危うさも感じている。

超の問題は根底にある魔法世界の限界を含めて根が深く一概に結論を出す問題ではないと考え、土偶羅は元より超の計画を知る雪広家や那波家に関西の詠春と穂乃香などを含めて何度か話し合いをしているが未だに結論は出てない。

以前にも説明したが計画を止めること自体は現状で計画の全てを土偶羅が監視してる中では難しくないのだが、決断出来ぬ原因はやはり魔法世界の限界にある。

そもそも近右衛門自身は超がしようとしている魔法の公開そのものについては実は何がなんでも反対という訳ではなく、二つの世界できちんと話し合いをして合意が出来たのちに入念な準備をしたならば公開してもいいのではとも思っていた。

インターネットやマホネットなどが普及し情報の流れは国境どころか世界を越えて自由に流れている現代において、魔法の秘匿が歴史上類を見ないほど難しくなっているのは確かでこの先の未来を考えるといつまでも隠せるものではないのかもしれないとも思うのだ。

世界の為を思えばいつまでも魔法という力と技術を隠し独占するのはいいこととは言えないのだから。

ただここで難しいのは先程も上げた魔法世界の限界とそれをどうするかである。

正直なところ近右衛門達は未だに魔法世界の問題に対する方針が崩壊に備えるとしか決まってなく、事実上見捨てるという方針から超と話し合うにも出来ないのが悩みどころだった。

彼女もまた麻帆良学園の生徒であるし問答無用に止めるよりは話し合いをしたいが、彼女の最終目標である魔法世界の問題を知らぬでは話にならないだろう。


「ワシとしては嫌いではないんじゃがのう。」

ただ近右衛門自身は極論を言えば超に魔法世界の救済をさせてもいいのではとも思わなくもない。

ただし地球側の世界と麻帆良を巻き込まないという前提を守れるのならば。

近右衛門も超が麻帆良や地球側に影響を与えずに魔法世界の救済をやるのなら、どうぞ頑張ってくれと歓迎し影ながら協力もするだろう。

まあ彼女の有無を言わさぬ方法で世界に自分の理想を押し付けるやり方はどうかと思うが、あの世界はそうでもしなければ救えないのは理解もしている。

それに近右衛門が考える限りでは現時点で魔法世界を救えるのは超鈴音か横島しかいない。

孫の幸せそうな顔を見ていると近右衛門は横島にそんな業を背負わせるなど出来ないし、ならばやる気もありやれる可能性がある超鈴音にやらせてみてはと考えてしまう。

もちろん実際に計画をたてて実行するとなれば地球側への影響を最小限とする魔法世界の救済計画を検討するなど、問題は山積みであり成功させるには近右衛門のみならず横島にも影ながら協力してもらわねばならないが。

だが近右衛門はそこまで考えるとその考えは二十年前の秘密結社と同じ身勝手な救済の押し付けでしかなく、到底うまくいくとは思えないのでため息しか出てこない。

結局近右衛門はこのあとも悩み続けるしか出来なかった。



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