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二年目の春・2

さて突然横島が言い出した魔法の練習方法の変更に少女達は喜ぶ者や冷静に受け止める者など反応は様々であるが、全体的には総じて期待した様子である。


「誰から教えるかだけど……。」

「じゃんけんぽん!」

「イェイ! 私の勝ち!!」

横島はとりあえず誰から始めようかと考えだすが結論を出す前に少女達はじゃんけんを始めてしまい、当然ながらじゃんけんをすれば桜子が有利であり一番は桜子であった。


「まあいいか、じゃあ始めるぞ。」

そして順番が決まると少女達は元より刀子ですらも横島がどう指導するのか興味津々である。

今の今まで横島は魔法の指導を刀子に任せたままほとんど見てるだけだったので、横島が自ら動くのは異空間アジトで高畑が魔法を使えるようにして以来のことなのだ。

横島は椅子を向かい合うように並べるとそのまま桜子と膝と膝がふれ合うほど近い距離で向かい合うように座り、桜子の手を甲から握り手のひらを二人の中央辺りで上に向けて開かせた。


「難しく考える必要はないからな。 そのまま楽にしてていいぞ。」

それはまるで横島が占いで手相を見る様子と似ていると周りの少女達と刀子は思う。

普段は魔法のカケラも使えるように見えない横島であるが、占いをするときなどごく希に不思議なほど別人のような雰囲気になることをみんな知っている。


「プラクテ・ビギ・ナル、アールデスカット。」

一人目が桜子なのは案外適任だったかもしれないと横島は緊張感がなくワクワクした様子の桜子を見て思っていた。

それに桜子の手を取り桜子の魔力を横島が操作しながら呪文を唱え魔法を発動させると、思っていた以上の潜在的な才能に少々驚かされもする。


「うわ~、魔法が出た!」

「今魔法を発動させたのは俺だけど、魔法を使ってるのは桜子ちゃんだ。 この感覚を感じて覚えてみてくれ。」

横島が発動させた魔法は西洋魔法の初歩である火種を灯す魔法であるので一見すると派手さはないが、桜子を始め周りの少女達は桜子の手のひらの上に発動した魔法に喜びや驚きの声が聞こえた。


「他人の体で魔法を使うなんて……。 そんな……。」

一方この場で唯一の魔法関係者である刀子は、他人の体で魔法を使う横島の非常識さに唖然としている。

流石に刀子もまさかそんな方法だとは思わなかったらしいのだが、横島の世界だと神魔には割と出来ることでかつてヒャクメが令子の時間移動能力を使ったり横島の体に入り操ったようにさほど珍しい技術ではない。

少なくとも横島にとっては。


「じゃあ次は桜子ちゃんが呪文を唱えてやってみよう。 何度かやればある程度感覚を掴めると思う。」

その後横島は桜子に呪文を唱えさせて自身が魔力を操作するなど桜子が出来てないところを手助けをしつつ桜子に何度も魔法を使わせていく。

元々魔力や気は意識して使えなくとも人ならば生きていく上で必要な最低限は無意識に使っているものであり、体や霊体に使い方を覚えさせれば初歩の魔法程度ならば高畑のような例外を除けば使えるものである。

結果として桜子は十五分ほどこの練習を繰り返すと、数回に一度は一人で魔法を使えるようになっていた。


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