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二年目の春・2

さて夕食後には店を閉めて魔法の練習をしていたが、三ヶ月を過ぎた未だに誰一人魔法らしきものが出来てなかった。

原因は考えるまでもなく練習不足であり、圧倒的に練習時間が足りない。

ただ最近はホワイトデーに横島があげた腕時計型通信機は魔法発動体としても使えるので、寮の部屋でも勉強会と称しながら刹那を監督者としてちょいちょい練習をしていたので練習時間は増えてはいたが全体を通してみるとまだまだ練習時間が不足している。

ちなみに日頃の夕食には相変わらず刹那は来てないが、刀子が監督者の居ない場所での魔法の練習を禁止してる影響で少女達の魔法の指導と監督は女子寮では刹那が勤めることが増えた結果、少しずつではあるが木乃香を始めとした横島に近い少女達との交流が増えていた。

ありていに言えば周囲の魔法関係者で一番暇で頼みやすいのが刹那だけだったということだが。


「ううー!! つまんない!」

なお少女達の魔法上達の妨げになっているのは、練習時間の他にも少女達の魔法に対する認識も関係する。

何とかの一つ覚えのように同じ呪文を繰り返すだけの単純作業には集中力が続かず、桜子なんかはすぐにつまらないと騒ぎだしてしまうのだ。

それに本来ならば魔法に熱中するはずの木乃香や夕映やのどかでさえ、魔法の練習に集中出来なくなるとあっさりと止めて他の仕事や読書に移行してしまうのも原因だった。

魔法を使ってみたいとの夢はあるものの、どうせ現実には使い道がほとんどないんだからとの冷めた気持ちもある。

本来の歴史のように魔法使いに襲われたり、味方が子供の魔法使いしか居なかったりしたならばまた別なのだろうが。


「そろそろ少し教え方変えてみてもいいと思うんすけど?」

一方早くも飽きてしまう桜子に横島は昔の自分を重ね合わせたからか苦笑いを浮かべるが、三ヶ月を過ぎても一切結果の出ない現状には流石に効率の悪さを感じており練習方法の変更を考え始める。


「そうね。 確かにこのままじゃあね。」

横島としては効率の悪い練習が無駄にしか思えなくなってきたとの理由があるが、刀子も新しい練習方法の導入に少し悩みながらも賛成していた。

元々西洋魔法の初歩的な練習はもっと幼いタマモのような子供がすることを想定した指導方法であり、魔法の指導自体が年齢による精神的な成長に合わせるようにゆっくりしたもので考えられている。

魔法の常識を学んだり試行錯誤しながら魔法を教えた方が少女達の為になるのは確かだが、この三ヶ月を見ていると熱意の問題もありこのまま現状を続けてもただ効率が悪くなるだけになりつつあった。

正直現在の状況でも個人で程度の差はあるが少なくとも魔法を使って馬鹿なことをする者は居ない。

先程エキセントリックな発言をしたハルナでさえ魔法や横島の秘密はきちんと守っていて問題はないのだ。

加えてハルナの発言繋がりで言えば魔法使いが魔法の実力がない者を下に見たりすることは麻帆良でも存在する。

流石にある程度年齢がいけば常識や世の中を知ってそんな馬鹿は居なくなるが、学生の身分なんかだと魔法の実力があるだけで一目置かれるのは確かだった。

仮に新人研修に参加するに辺り三ヶ月で基礎魔法を一つ覚えたというのは、単純に日数だけで考えると決して早くはない。

まあ近右衛門の孫が居る集団を馬鹿にする人間は居ないだろうが、あまりナメられては今後少女達が大変になる可能性は十分にある。

結局そういった様々な状況や要因を考えると、そろそろ初歩の魔法くらい覚えてもいいだろうと刀子は判断したようだ。


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