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母からの伝言

そんな変わりゆく日常に必死に対応しようとする横島や魔鈴だったが、時の流れは待ってはくれない

前夜から雨が降り続いていたその日、横島は僅かに複雑な表情で校舎の窓から校庭を眺めていた


「横島君、なんかご機嫌ナナメね。 彼女とケンカでもしたの?」

いつもと違う横島の表情に気付いた愛子は、もしかして彼女とケンカでもしたのかと心配そうに声をかける


「ケンカなんかしてないよ。 ただ雨が降ってるなって……」

日頃あまり見ない表情の横島に愛子のみならず周りに居た女子やピートも興味津々な様子で見つめるが、横島は言葉を濁したまま外を見つめるばかりだった



「今日でしょうか?」

「横島の記憶と天気から考えると今日の可能性が高いはずじゃ」

一方魔鈴事務所となっている横島のアパートでは、魔鈴とカオスが降り続く雨を見つめこちらも複雑そうな表情を浮かべている

ただ魔鈴とカオスでは複雑な意味がまるで違うが……

魔鈴は美智恵が来ることへの表情だが、カオスはマリアの改造が間に合わなかったことへの表情なのだ


「あの人だけは二度と関わりたくありませんでしたね」

「ワシも関わりたくなどないわい。 あの親子に関わってよかった記憶が全くない」

いよいよ来るだろう美智恵を思い出す魔鈴とカオスは、二人一緒にテンションが下がっていく

魔鈴は当然としても、カオス自身も美神親子に関わってよかった記憶がないようだった

できることならばこのまま次元の果てにでも消えてくれないかと半ば本気で考える二人だが、いつまでも愚痴ってなどいられない


「では始めましょうか」

雨が降り続く窓を開けた魔鈴は杖を片手に呪文を唱え始め、呪文と共に杖の宝玉が光輝くと十匹近いカラスがやってくる


「ごめんなさいね。 少しの間協力してちょうだい」

やって来たカラスは本当に大人しく、魔鈴とカオスは足に超小型のカメラを装着するとカラス達を空に放っていく

これはいわゆる動物や鳥類を操り使い魔にする魔法の一種であった

古来より魔女はカラスや黒猫などを使い魔とするとされるが、本来はこの動物や鳥類に一時期に協力して貰う魔法が使い魔の実態である

ちなみに魔鈴が飼っている黒猫に関しては、使い魔ではなく普通の猫である

ただあの猫は生まれ持った高い霊力により、人間の言葉を理解して話せるだけなのだ

実は魔鈴がイギリス時代に妖怪扱いされて引き取ったが、現在も妖怪化はしておらずただのしゃべる黒猫である


さてカラス達を一時期に使い魔としてカメラを付けた理由だが、もちろん令子の監視だった

流石に魔鈴もずっと外で令子の見張りをする訳にはいかないし、マリアの改造も間に合わなかった為に他に方法が無かっのだ

一時期とはいえ相手を操るこの魔法は、魔鈴が最も使いたくない魔法の一つなのだが背に腹は変えられない

現実は失敗が許されないだけに確実性を高めるしか無かったのである



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