さて映画撮影の見学をした横島達だったが、その後は平和な日常に戻っていた

最近少し変わった事と言えば、オカルト業界での魔鈴の立場や扱いが微妙に変化をしてきている

元々イギリスでＧＳ免許を取得したために、魔鈴は日本のオカルト業界関係者とは関わりが薄かった

まあ弟子をとらないのも有名だし、世界で唯一の魔女ということでいろいろ賛否両論な噂をされていたのもある


しかし雪之丞のＧＳ試験首席合格の影響で、魔鈴の周囲も変化をしてきていたのだ

具体的には仕事の依頼が以前の数倍も増えている

それに以前にはほとんどなかった他の事務所からの協力依頼も、飛躍的に増加していた

情報の伝わるスピードの速さは凄まじいもので、雪之丞の実力＝魔鈴の実力とも受け取られており、魔鈴の予想以上に世間の魔鈴への期待度も増していたのだ



「はい、すいませんが現在新規の依頼は受けてません。　どうしてもとおっしゃるなら、私の信頼するＧＳを紹介いたしますが……」

この日も店の電話にかかってきた除霊依頼に、魔鈴は申し訳なさそうに断りを入れる

看板を上げてる訳でもないのに一日に何件も依頼が舞い込んでいるのだが、レストランが本業の魔鈴は新規の依頼を全て断っていた

ただでさえ店の常連や客の繋がりの依頼が増えていたのに、新規の依頼を抱えるなど魔鈴には不可能だったのである


「ふー、困りましたね」

電話を切った魔鈴はため息混じりに苦笑いを浮かべる

世間にはＧＳ事務所は多数あるにも関わらず、魔鈴への依頼はなかなか減らなかった

世界で唯一の魔女という肩書きも原因の一つであるため、危険度の高い依頼や難解な依頼も少なくない

しかし魔鈴としては第一線級の依頼を受けるつもりなど全くないのだ


（私の実力では受けられませんからね……）

現状で危険度の高い依頼や難解な依頼を受ければ、横島や雪之丞に負担がかかってしまう

魔鈴としては自分の力以上の依頼は、絶対受けられなかった



「突然申し訳ありませんが、弟子にして下さい！！」

電話が終わった頃、店の入口では２０才くらいの女性が突然弟子入りを志願していた

これもまた最近の変化で雪之丞という弟子を抱えた結果、魔鈴の弟子に成りたいという霊能者がちょくちょく尋ねて来るようになっている


「魔鈴殿は弟子はとらないでござる。　申し訳ないでござるが諦めてくだされ」

店の入口で弟子入り志願する女性に、シロは丁寧に謝っていた

これまた最近の魔鈴の店ではよくある光景である


「えっ！？　でも弟子をとったと聞いたのですが……、本気で学びたいんです。　お願いします」

シロが丁寧に断るが、女性はそれでも食い下がる

せめて魔鈴本人に会わせてくれと言う女性に、シロは困ったように魔鈴を呼びに行く


「申し訳ありませんが、弟子をとるつもりはありません。　店のお客様にも迷惑になるのでお帰り下さい」

何かと理由を付けて弟子にしてもらおうという女性に、魔鈴は何度も頭を下げてようやく帰ってもらっていた

弟子入り志願者はいろいろなタイプが居るが、何人かに一人は店の営業時間に来る

常連の客はすでに慣れて来ているが、若干営業妨害になっていた