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二年目の春・2

翌日は昼休みになるとさよと木乃香達四人が近右衛門に呼ばれて学園長室を訪れていたが、そこにはすでに刀子と高畑も居て木乃香達は何事かと顔を見合わせる。


「研修ですか。 ああ、そう言えば新人は顔合わせ目的に研修をしてると聞いたことがあるです。」

「うむ、みんなにも一応参加して貰いたいと思うのじゃが横島君がちょっとな。」

近右衛門は木乃香達にさっそく用件を伝えるが、それは前日に悩んでいた魔法協会の新人研修への参加についてであった。

実はこの日の朝に近右衛門と刀子と高畑で相談をしたが、結局は参加させるしかないという意見で纏まっている。

現状で横島は麻帆良でも一二を争うほどの有名なフリーの魔法関係者となってしまっていて、去年の今頃のように魔法協会と関わってなければまた別なのだろうが現状では参加しないとかえって注目を集める可能性が高いのが主な理由だ。


「研修なんてあるんですね。」

「ええ、研修という名目だけど実際には魔法協会の説明と各部署の責任者との顔合わせなどね。 綾瀬さん達が使ってる図書館島の協会専用フロアとかの施設の使用方法や制限なんかの説明をしてるのよ。 他には魔法協会のサポート体制の説明とか特別講義や集団訓練とか行事の説明とかいろいろあるのよ。」

魔法協会の研修については夕映とのどかは以前聞いたことあるらしいが、明日菜と木乃香とさよは初耳らしく興味ありげに耳を傾けていた。

夕映とのどかにしても自分達は参加しないのではと思っていたようで、参加する方向であることに少し驚いていたが。


「正直あまり目立ち過ぎずにサッと参加して終わらせて欲しいんじゃ。」

近右衛門達の説明する研修に対して木乃香達は乗り気とまでは言わないが参加する必要性は理解する。

ただまあ明日菜なんかは眠くなりそうだと内心で思っていて、美砂達もあまり興味ないだろうなとも思うが嫌だと言うほどでもない。


「つまり私達に横島さんを大人しくさせてほしいということですか?」

「いや、そこまで言っておらんがどうも横島君は無意識に目立つようでな。 無用の注目は集めたくないんじゃ。」

そして夕映とのどかと木乃香は近右衛門達がわざわざ自分達だけを呼んで事前に説明した意味を即座に理解していた。

以前から度々説明しているが基本的に横島が動いたり関わったりすると騒動が起きたり拡大しやすい性質がある。

最早手遅れではと夕映なんかは密かに思うが、近右衛門からすると明日菜の素性と横島の秘密は何がなんでも守らねばならない。


「あの……実際何か問題が起きそうな原因があるんですか?」

なんというか悪く言えば横島のお守りをしろという風にも聞こえる近右衛門の言葉だが、木乃香達も確かにそれは必要だと思うのが横島の現状を物語っている。

そんな中でのどは少し具体的な話として、近右衛門が懸念する何かがあるのではと感じそれを遠慮がちに尋ねていた。


「若い魔法使いの中には実力を試したり比べたがる者もいるんじゃよ。 指導はしとるが個々の実力差が激しいのでどうしても問題になることがある。 人は力を持つと使いたくなるからのう。」

のどかの予感は見事にその通りで近右衛門は少し渋い表情を浮かべると、魔法協会の根本的な問題とも言えることを話して聞かせていく。

それは関東魔法協会が特別ではなく、仮に魔法が絡まなくても起きる問題ではある。

ただ魔法という秘匿された力を持つと一般には隠さねばならないため、内部で実力を見せつけたり試したりしたがる者が一定の数で存在した。

まあ彼らの行動も別に命を取ったり大ケガをさせるほどではなく、力比べといえるレベルで互いに切磋琢磨していきたいとの気持ちもあるので一概に問題だと言えるものではないのが難しいところでもある。

しかしそこに横島という存在を加えるとどう変化するかは近右衛門も読みきれてなかった。


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