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二年目の春・2

さてそんなこの日の夕食はいつもの木乃香とのどかではなく、明日菜と夕映に手伝って貰いながら和風イタリアンで纏めていた。

実は昨日旬のタケノコを頂いたのでそれを使ってパスタとミネストローネなどにしたのだが、基本としては当然イタリアンであるがかなり和を意識した味となっている。


「たまにはこういうのもいいな。」

日頃からあまり料理はしない明日菜と夕映であるが、最近はそれでも横島が暇な時には料理を教わったりもしていた。

木乃香やのどかと違いあくまでも家庭料理の基本くらいしか教えてないが。


「そう言えばタケノコって、イタリアンとか洋食では見たことないですよね?」

「ヨーロッパは竹自体が元々無かったからな。 最近だと多分缶詰とかで売ってるだろうけど。」

タケノコの下処理は横島がしたのであくもなく美味しい。

今回の和風イタリアンは元々メニューがあった物ではなく横島が思いつきで適当に作っているものだが、思っていた以上に美味しく出来ていた。


「美味しいです。 微かにダシの味がしますね。」

今時和風パスタなんかは特に珍しくはないが、なんというか横島が作ると一味違うと素人でも分かる美味さがある。

夕映はその秘密は何なのかと常々考えているものの、見てる限りでは日頃の調理で特に珍しいことはしてない。


「こうして盛り付けると美味いイタリアンみたいだろ?」

ただこの一年で料理の腕前が超一流なのは十二分に理解しているが、慣れて来た今だから気付くのはだんだん料理に横島らしさが出て来ているのかもしれないとも思う。

王道とも言える料理も美味しいが、案外思い付きなんかで作った料理は型にハマらない横島らしさが特に現れてる気がするのだ。


そんないつもと変わらぬ様子で楽しげに料理する横島を夕映はなんとなく眺めてしまうが、ふと頭をよぎったのは昼間に美砂が話していた横島は大きな胸が好きなのではとの言葉だった。

実は少し冷めた見方をすると夕映は自分が横島に女性として求められることは、この先もないだろうと半ば諦めにも似た気持ちが以前から心の中には存在する。

元々異性に社交的でもなくモテるタイプでもない夕映は、他の友人達と自分は違うと言う劣等感のような感情もあった。


「ん? どうした?」

それに口には出さないが夕映は刀子が半ば横島に対して諦めてることにも密かに気付いている。

横島には刀子に気があるようで自分から踏み込むつもりがないのは端から見てると明らかだし、大人としての立場もあるし木乃香を初めとした少女達とでは勝負が出来ないと悩んでることもおおよその検討はついていた。


「いえ、ちょっと考えごとを。」

「あんまり一人で抱え込んだらあかんぞ。」

夕映が少しばかり考え込んでいたのはほんの短い時間だったが、夕映の様子が気になった横島は夕映の思考が更に深みにはまる前の絶妙なタイミングで声をかける。

相変わらず自身に向けた恋愛感情以外の人の気持ちの変化に敏感な人だなと夕映は改めて思うが、同時に現状の自分達が上手くいってるのは横島が良くも悪くもみんなを平等に扱うからだろうと思う。

そのままいろいろな考えが頭をよぎり消えていく夕映だが、どんな形でも側に居たいと思わせる横島はある意味危険な男なんだろうなとしみじみと感じていた。


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