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二年目の春・2

その頃、図書館島の地下にある魔法協会専用の書庫には夕映とのどかの姿があった。

そこは図書館探検部でも知らぬほど秘匿された書庫であり一般人は入ることが出来ない場所であるが、二人は時々暇を見つけてはここのような魔法協会の施設にて魔法関連の勉強や情報収集を行っている。

尤も正式には魔法協会員ではない二人は魔法協会の協力者という立場であり、得られる情報は魔法協会員に比べると限られてもいるが。

しかし魔法関連の一般的な知識を学ぶには十分であって、二人はこの三ヶ月余りで何度も訪れている場所になる。


「君達は本当に熱心だね。 最近の若いもんは派手な魔法ばっかり覚えたがって、歴史なんてほとんど覚えようとしないのに。」

この魔法協会専用書庫は図書館島の地下と同じでかなり広い書庫であり、一般的な図書館よりも膨大な量の本がある。

当然ながら常に何人かの職員が居るが、基本的には年配者であり現役を引退したOBが半分ボランティアのように勤めていた。


「私達はまだ魔法が使えませんから。 せめて常識くらいは学んでおきたいのです。」

「焦ることはないさ。 君達は確かに始めるのが早くはないが他にもそんな人は居るから。 努力次第では十分追い付けるよ。」

夕映とのどかは何度も来ているからか、すっかりここの職員とも顔馴染みとなり魔法関連の常識や知識を話として聞くこともよくあった。

職員がほとんど年配者のOBなので経験豊富な上、過去には見習いを育てたことがある者達なので素人に毛の生えた程度の二人に親身になってくれている。


「近藤さんは今じゃここのヌシだけど、実は元最高幹部の凄腕魔法使いだったんだぞ。 若い頃は魔法世界から来て威張り腐ってた見習い魔法使い達をぼこぼこにして震え上がらせたからな。」

ちなみに二人に対して特に親身になってくれているのは書庫のヌシと呼ばれてる最年長の老人で年齢は八十後半くらいだろうか。

優しげなお爺ちゃんといった印象で元々お爺ちゃんっ子だった夕映なんかは特に親しくしている人物だったが、実は魔法協会では有名な魔法使いらしい。

実力も相応にあったようで、夕映達はしらないが二十年に関東魔法協会からメガロメセンブリアの魔法使い達を追い出した際には近右衛門と共に活躍した一人でもある。


「それはまた……、凄いですね。」

「昔は今よりもっと差別意識が強かったからのう。 それに比べると最近の向こうの連中は大人しいわい。」

ここにいる年配者達の話は本やコンピュータのデータベースにはないリアルな歴史の証言であり、夕映とのどかも興味をそそられるのかいろいろ質問してしまうこともあった。

この日は近藤と呼ばれてる年配者の昔話を聞いていたが、年配者達の話では魔法世界も昔に比べるとだいぶ変わったらしい。

そもそも地球側でも半世紀ほど前までは奴隷が居たりと人種差別なんかが普通にあったが、魔法世界や魔法使いに関しても基本的には同じかそれ以上だったようだ。

まあ魔法世界は現代でもメガロメセンブリアなんかには内心では魔法世界の亜人を人と認めてなかったり、彼らが旧世界と呼ぶ地球の人とも違う魔法世界人だとの特別意識が強い者が多いらしいが。

ただ夕映やのどかにとって第三者とも言える魔法協会員の人達の話は、いろいろ考えさせられるものがあり話を聞くことも貴重な経験となっていた。



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