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二年目の春・2

「えっと、本日はみなさんお疲れさまでした。 イベントの成功を祝して乾杯したいと思います。 乾杯!!」

春祭りの注目イベントとして行われた麻帆良亭の一日限定屋台は大盛況のまま午後六時過ぎには売り切れ閉店となっていた。

そのまま簡単な後片付けなどを終えた一同は、同じ会場内の事前に場所取りしていたところで花見をしながら打ち上げをすることになる。

主催サークルのメンバーに坂本夫妻と弟子の藤井、それと横島達にこの日サポートしてくれていた雪広グループの関係者など打ち上げに参加したメンバーは二十人を越えていた。

代表して主催サークルのリーダーが挨拶をして乾杯をすると、一同は今日一日の疲れを癒すようにお酒やジュースなどの飲み物で喉を潤す。


「あ~、ビールが美味い!」

昼食に続き料理は他の屋台の物を中心に主催サークルの人達が用意してくれたが、今回は打ち上げ用にと残していたこの日提供された麻帆良亭の料理も一緒に並んでいる。

頑張ってくれた主催サークルの人達にも食べて欲しいと、販売用とは予め別にしておいた分の料理だった。


「お嬢ちゃんもたくさん食べろよ。 今日は本当に頑張ってたからな。」

打ち上げ場所は麻帆良でも一二を争うほどのお花見スポットなので、桜に囲まれていて周囲はびっしりとお花見客達で埋まっている。

実は主催サークルの人が今朝の夜明け前から場所取りをしていて、日中は親交がある別のサークルに場所を貸し出していたなんて裏話もあるが。

麻帆良に長いこと住んでる明日菜ですらこんな一等地でのお花見は始めてらしい。


「うん! いっぱいたべる!」

大学生を筆頭に大人達はお酒を飲みながら料理に舌鼓を打つが、木乃香達はもちろんのことタマモもまた負けずに料理を味わっていた。

元々イベントや祭り慣れしている大学生達なだけに今回のイベントは横島が関わったにしては計画的だったが、大学生達が唯一驚いたのはタマモの活躍だろう。

正直大学生達の計画ではタマモは戦力として考えられてはなく、逆にタマモが怪我をしたり迷子にならないように注意してあげようと話をしていたくらいなのだ。

それが蓋を開けてみれば行列の整理から募金集めまで見事にこなしている。

行列に並ぶ者の中には子供を使って姑息だと陰口を叩く者も居ないでもなかったが、一生懸命働くタマモの姿に逆に他の客なんかから睨まれることになっていた。

結果タマモはサークルの人達とも仲良くなり、先程からみんなに声をかけられては何度も乾杯したり料理を勧められたりと忙しい。


「こんなに賑やかなお花見なんていつ以来かしら?」

一方本日のメインである坂本夫妻は大学生達や木乃香達に囲まれての賑やかな花見が珍しいようであった。

まあ坂本夫妻も毎年花見には行っていたようだが、同年代や子供や孫とは言っても若い学生達と大人数で花見をしたのは随分久しぶりらしい。




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