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二年目の春・2

この夜少女達や麻帆良カレー事務局の人が帰った後、横島の店には一人残り仕事をしていた刀子に加えて、少女達と入れ替わるように高畑が訪れていた。


「さて、どうしたもんかな。」

この日二人が少女達が居ないタイミングで揃ったのは、横島が高畑から少し前にクルト・ゲーデルの最新の動向を出来るだけ詳しく教えて欲しいと頼まれていたからである。

クルト・ゲーデルの詳細な情報は現状では近右衛門達には伝えられていたが魔法協会自体には秘匿されていた。

大まかには伝えていたが、流石にあまりに詳細過ぎる情報は横島を除くと近右衛門と刀子と詠春くらいにしか知らせていない。

雪広家や那波家も立場的には知ることは可能ではあるが、正直あまり必要性がないため大まかな報告を受ける程度である。


「やっぱりその人が一番欲しいのは高畑先生の協力っすね。 連合内の赤き翼の支持者を再び取り込むには高畑先生が必要っすから。」

一方の高畑の立場は以前よりはいいが、正確には未だに微妙だと言わざるを得ない。

かなり落ち着いてはいるが魔法世界と麻帆良を天秤にかけたらと考えると、答えを明言してない為だ。

結果としてクルトの動向に限らず魔法協会に秘匿している情報は高畑には限定的にしか伝えられてなく、クルトの動向も高畑が求めれば開示はされてるが横島や近右衛門の側から積極的に伝えている訳ではない。

そもそも横島の情報収集能力に関しては高畑には説明自体してなく、ここ数ヵ月の横島との交流から高畑が自力でたどり着いた段階になる。

近右衛門も日頃からいろいろ忙しいので高畑はこの際だからと横島に直接情報提供を頼むことにしたらしいが。


「あまり追い詰めると暴走しそうだが、だからといって力を与えるのもまずい。 正直対応に悩むよ。」

ここのところクルト側からの高畑への接触は途絶えがちであった。

現状で高畑はクルトのみならずメガロメセンブリア関係との協力自体を止めているが、クルト一派以外にも高畑が所属する組織悠久の風からも定期的に協力要請は来ている。

正直高畑とクルトの関係は見た目以上に微妙であると同時に、高畑の動向にはメガロメセンブリアも注目していた。

はっきり言えば高畑が再びクルトと組めばクルトに復権のチャンスを与えることになるが、メガロメセンブリアではそれを望まぬ勢力が大半になる。


「俺は下手に動かない方がいいと思いますけどね。 下手すると高畑先生ばかりか学園長先生まで類が及びますよ。 向こうには高畑先生の名声を落としたい人が多いんですから。」

加えて高畑自身も魔法世界では立場的に難しい立場に立たされていた。

共に赤き翼の後継者と見られていたクルトが赤き翼としての信頼を失いつつある今、残された信頼は高畑一人に集まりその影響力はメガロメセンブリア元老院でさえ無視できないものになりつつある。

当然ながら英雄の名声を落としたい連中は少なくないが、問題なのは高畑にはそんな政治的な駆け引きを踏まえた行動が出来ないことにあった。

完全なる世界が健在であるだけに高畑の名声を落とすことに慎重な勢力もあるが、かつてのナギ同様に自分達のコントロールが利かない高畑は以前から危険視もされている。

それでもまだクルトが失脚するまではクルトの力や赤き翼の支持者の影響もあり問題は表面化しなかったが、クルトの失脚の影響が地味に高畑にも及びつつあった。


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