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二年目の春

さてこの日の横島宅では家の掃除を終えたハニワ兵が洋服作りに勤しんでいた。

元々趣味で洋裁をしていたハニワ兵がタマモの為にと始めた洋服作りであるが、評判がよく他から頼まれて作って以来コンスタントに注文が入っていて充実した日々を送っている。


「ぽ~?」

ハニワ兵が作る服は横島やさよの分もあるので特に子供服が得意という訳ではなかったが、少し前までは基本的に注文のほとんどが子供服であった。

やはりタマモが着ている服が人気でその可愛らしい容姿と相まって、親しい友人の子供への贈り物なんかにも喜ばれている。

ただ最近は女子中高生からの注文も以前と比べて増えつつあり、これは今年の始めに魔法の存在を知った美砂達に頼まれて服を作ったことだった。

年齢で言えばさよに作った服も同年代なのだが比較的大人しめの服を好むさよと違い、流行りの服なんかを好む美砂達の服は一言で言えば目立つものだったのだ。

日頃から土日は予定が無ければ横島の店に居る美砂達が一種の宣伝のようなものになってしまい、店の常連なんかから服を頼まれることが増えていたのである。

ただいくらハニワ兵とはいえ家事の合間に作れる服の数は限られており、最近は異空間アジトに居る同じ洋服作りが趣味の仲間達に手伝って貰い生産数を増やしつつあった。

元々商売のつもりで始めた訳ではないので儲け自体ほとんどない原価生産に近いが、ハニワ兵としては今後も商売にするつもりはないらしい。



「うーん、今一つだな。 どうだ?」

一方この日の横島はタマモと一緒に、雪広グループから少量だけ仕入れた新しいコーヒー豆を使ったコーヒーの試飲をしていた。

一般的な喫茶店と比べて客層が片寄ってる横島の店ではあまり注目を集めることはないが、コーヒーや紅茶もそれなりにこだわった物を提供している。

コーヒーに関しては自家焙煎は当然として使うコーヒー豆も横島が自ら選んでいるものの、値段との兼ね合いもあるのでいかに安くて美味しい飲み物を提供するかが問題であった。


「わたしはいつものほうがすき。」

まあ開店当初のように異空間アジト産の食材を使えば楽なのだが夕映達が働くようになって以降は主に雪広グループに頼っているし、それは彼女達に異空間アジトの存在を明かした今でも変わらない。

横島としては少女達に隠す必要がない以上は異空間アジト産に戻してもいいのだが、痛くもない腹を探られる原因を作るのはやめた方がいいという少女達の至極真っ当な意見により現在も仕入れは普通に行っている。

そもそも横島が楽をしようとしなければ普通に仕入れても十分やっていけることであり、ただでさえ目立つ横島に秘密が露見する可能性がある原因をわざわざ作るのは得策ではなかった。

というか雪広グループの卸値はグループ価額と同様なので下手に問屋から購入するよりも安いので尚更である。


ちなみにコーヒーの試飲は横島はブラックで飲んでいるが、お子様であるタマモはブラックコーヒーは数少ない苦手な飲み物なのでミルクと砂糖を入れた試飲だった。

店では味見はタマモの仕事の一つなのでタマモは真剣に味わっている。





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