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その二

お世辞にも裕福と言えない人狼族から、なけなしの金をもらうのを魔鈴はためらう

人間社会との交流は無いとはいえ、少し採れる金で肉などを人間の街から買ってはいるのを魔鈴は知っているのだ


「足りないじゃろうが、受け取って下され。 わしらの気持ちじゃから…」

ためらう魔鈴に気付いた長老は、頭を下げて笑みを見せる


「はい、有り難く受け取らせて頂きます」

長老の一言に魔鈴は金を素直に受け取った

魔鈴としては無料で構わないのだが、これ以上こだわれば人狼のプライドを傷つけるのだ


「じゃあ、シロの親父さんの準備が整い次第東京に戻ろう。 犬飼を探さなきゃならんしな」

話が決まり立ち上がろうとする横島を見て、シロが長老の前で土下座をする


「長老! 父上! 拙者も行くでござる! 東京は父上より慣れてるゆえ必ず役に立つでござる」

真剣頼み込むシロを見て、長老とジロウは顔を見合わせて悩む

未来から来たのは確かかもしれないが、今のシロを見るとやはり不安になるのだ


「……いいじゃろう。 ただし、犬飼を自分で倒そうと思ってはならんぞ?」

長老はジロウと横島達の顔を見て確認を取った上で、シロの同行を許可する

シロが横島達を追って未来から来たなら、一緒に行った方がいいと判断したのだった



その後旅仕度をしたシロとジロウの親子を連れて、横島達は急ぎ東京に転移して行く


「みんな気をつけるのじゃぞ…」

横島の実力を見た長老も、八房の特性を知るだけに不安が隠せない

そんな長老は横島達を見送りながらも、無事を祈らずにはいられなかった



一方、事務所に戻った横島達はカオスを交えて作戦会議を始めている

「横島、八房に勝つ自信があったとはいえ、少し迂闊だわ。 今のあなたの霊力で八房にかすり傷でも付けられれば、下手をすれば一撃でフェンリルが復活するパワーが集まる可能性があるわ」

初めに語ったのはタマモのダメだしであった


「それはカオスに言われてわかってたけどな…」

少し苦笑いして言葉を濁す横島

実は八房を相手にする上で、カオスはタマモと同じことを忠告していたのだ

八房が必要とする力は詳しくは不明だが、中級神魔クラスの横島や魔鈴の力を吸収すれば一撃でも危険な為、力を吸収される前に倒すことを前提にしていた


「私が言いたいのは、深夜の森で犬飼を追いかけようとしたことよ。 いくら横島でも深夜の森で八房を持つ人狼を追うのは無謀だわ」

そんなキツイ言葉を横島に向けるタマモを見て、カオスはニヤニヤと笑っている


「おぬしも相変わらずじゃな、タマモよ。 先ほどはあれほど慌てて飛び出して行ったと言うのに…」

タマモをからかうような笑みを浮かべるカオスは、タマモが逆行して来た時の事を語り出そうとする


「その話は今は関係無いでしょ!?」

恥ずかしそうに顔を赤らめて、カオスの口を塞ぐタマモ

そんな二人の姿はまるでおじいちゃんと孫のようである


「タマモをからかえるのは、カオスだけだからな~」

久しぶりの再開に横島達は思わず和んでしまう

横島と魔鈴も、タマモがいかに自分達を心配していたかを感じていた

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