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二年目の春

「妹ヨ、俺モヤルゼ。」

結局刀子と刹那に続けて茶々丸が霊動シミュレーターに挑戦することになるが、何故かチャチャゼロも一緒にやると言い出す。

チャチャゼロの場合は単純に見てるのに飽きただけなのだろうが、心配するタマモにまあ見てろと自信ありげな表情を見せていた。


「お疲れさまです。 これ今の戦いのデータっすよ。」

一方横島はコントロール室に戻ってきた刀子と刹那にも高畑同様に戦闘で得られたデータを渡すが、流石に教師である刀子はともかく刹那はそれをどう活用すればいいか分からないようで刀子が見てやることになる。


「ねえ、これって……。」

剣士としての実力は刀子の方が数値的にも上なのは確かで、神鳴流の技に関してもそれは同じだった。

しかし刹那が現時点で刀子を確実に上回っている点もあり、その一つは妖力値という数値である。


「数値は低いっすよ。 桜咲さんの潜在能力からすればね。 そっちの力を使う修行はしてないんだろ?」

「……はい。」

妖力という言葉に刹那の表情は曇るが、横島はあえて気付かぬふりをして声をかける。

神鳴流としては厳しい修行を重ねてきた刹那だが、過去のトラウマから半妖としての力は隠し使わずに生きて来たという事実があった。

しかし数値は無情なもので刹那の気や魔力の総量に比べると妖力値は決して高くはない。


「無理に使う必要もないけど、そっちの実力も頭に入れておくといい。 もしかしたら必要になる時がいずれ来るかもしれないしな。」

刹那の半妖としての潜在能力は結構高いと横島は見ている。

流石に九尾のタマモと比べると見劣りはするが、かつての友人であるピートのように上手く力を使えば人間や妖怪にはないメリットもあるのだ。

基本的に他人の生き方に首を突っ込む気がない横島は刹那が人として半妖の力を封じて生きることに意見する気はないが、先にもあげたピートのようにいつか必要になる時が来るかもしれない。

まあ頭の片隅にでも入れておけばいいと少しお節介はしたくなるようであった。


「あの、そっちの力も修行すれば強くなれるのですか?」

「そりゃあな。 力の在り方は違うが根源は同じ力だし、桜咲さんの潜在能力の半分はそっちの力だからな。」

あまり深く追求や指摘することなく簡単な説明とアドバイスで流した横島だが、意外にも話に食いついたのは迷いが見える刹那だった。

正直なところ刹那にとって半妖としての自分はトラウマどころではなく、その結果半妖としての力や能力について修行どころか深く考えたことはない。

そして半妖としての力や能力について相談する相手も居なかった。

神鳴流の修行で力の使い方は習ったし生まれつきある力を使いこなすくらいは出来るとは思っていたが、それを修行し強くなるとは考えたことがないのである。

人も妖怪も関係なく妖怪であるタマモを溺愛してる横島なだけに刹那は純粋に自分の疑問を尋ねることが出来ていた。


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