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その二

「あらこれも安いですわね。」

コーヒーショップで一息ついた横島とかおりは初売りで賑わう街にてショッピングを楽しんでいた。

まあ主に買うのはかおりの方で横島は付き合ってるだけという感じだが、初売りセールや目玉の福袋などお手頃な値段で欲しいものが幾つかあるらしくどれを買おうか迷っているようである。


「どうでしょう? 似合うかしら?」

「いいっすね。 似合いますよ。」

「ではこちらは?」

「そっちも似合ってますよ。」

「……念のため聞いておきますが、何を着ても似合うというのはダメですわよ。」

一応横島にも意見を求めて試着してみたりもするが、何を着ても似合うとしか言わない横島にかおりはこういう場合に一番ダメな意見を言われないように先に釘を刺していた。

横島に女心を理解してもらうのは期待してないが何を着ても似合うなんてのは、言い換えれば何でもいいとも受け取れるので流石に許容出来ない。


「そっ、そんなこと考えてないっすよ!?」

そんなかおりの一言に横島は恐らく指摘された台詞を言おうとでもしていたのだろう、少し冷や汗を流しながら笑って誤魔化す。

無論横島としては美人は何を着ても似合うと言いたかったのだろうが、女性としてその台詞は必ずしも嬉しくはない。


「横島さんは何か欲しい物はないので?」

「俺は特には……。 ああ、弓さんと一緒に出掛ける時に着る服でも見ようかな。」

そのまま無駄遣いはダメだと慎重に選び何着か服を買ったかおりであるが、次は横島の買い物でもと考えるも少し前まで貧乏まっしぐらだった横島は必要なものなんてすぐには浮かばなかった。

ただふと思い付いたのはかおりとこうして会う機会が増えたのはいいが高校入学以降はろくに服を買ってないので、彼女とデートする時に着る服のバリエーションがびっくりするほどないことである。


「そういえば確かに……。」

横島も自分なりに頑張っているが流石に服のバリエーションがないのはかおりも気付いていて、二人は何か横島が着る服を手頃な値段でないかメンズショップを見て歩くことにした。

かおりの場合は今時の女子高生なのでレディースのショップならそれなりに知っているが、メンズのショップはほとんど知らないので本当に近くをブラブラして見つけたら店に入ってみるしかない。


「ねえ、あれって横島君じゃない?」

「じゃあ隣が噂の六女の彼女!? めっちゃ美人じゃん!」

「しかも二人とも楽しそうにしちゃってまあ。 やっぱり付き合ってたんじゃん。」

なおこの日も横島とかおりの姿を横島の知り合いに見られていたらしく、二人の姿を見た知り合いというかクラスメートの女子は噂以上に美人な彼女と学校では見せないような横島の笑顔に驚き声をかけることすら出来ずに見送ってしまう。


「とうとう彼女出来たんだ~。」

「ちょっと残念だわ。 何だかんだ言ってクラスだと一番彼氏にするなら良さげだったのに。 顔だけならピート君の方が上だけど流石に付き合うとなったらバンパイアハーフだとちょっとあれだし。」

「普段からああしてればもっとモテたのに。 もう少し建前とか使って、おちゃらけ過ぎなかったら良かったのよね。」

女子達は始めてみた学校外でのしかも素の表情の横島に女子達は少し複雑そうな表情で噂話といういか、横島の知らぬ女子の側の裏話をしていくがやはり横島がモテないというのは半分は横島の思い込みだったらしい。

誰からも好かれる二枚目のピートとは違う良さが横島にはあって、横島がもう少し学校での態度を変えれば普通にモテたのにと残念そうに語る。

ある意味横島に聞かせてやりたい話であるが、そこら辺に不器用な横島が知ることは永遠にないだろう。

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