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二年目の春

ちなみに横島とエヴァが高畑の戦いを見ながら話をするのを少女達はやっぱりと言いたげな表情で見ていた。

薄々想像が出来たことであるが、横島は決して弱くはないのだろうと少女達は確信したようである。

まあ魔王の遺産を受け継ぐ者が弱く戦えないと言われるよりは自然なことであるが。

そして刀子と刹那だが二人はエヴァが語った体の魔力の流れを見ろという無理難題にどう答えていいか分からずに曖昧な笑みを浮かべていた。

人としては世界最高クラスの実力がある高畑と戦いながら相手の体の魔力の流れを見るなど、刹那は元より刀子も出来る気がしない。

ただエヴァにしても現状の刀子に出来ないのは承知の上であり、本気で修行すればという前提で話していたが。



「随分居合い拳を修行したみたいだな。 だが来ると分かっている攻撃は早々当たらんぞ。」

一方高畑とガトウの戦いは高畑の居合い拳を迎撃するように、同じく途中から居合い拳を放っていたガトウが自ら接近して接近戦になっていた。

居合い拳の威力とスピードは両者ともほぼ互角であるが、威力は若干高畑に分があり速射性はガトウに分がある。

しかしそれは互いに居合い拳の打ち合いで勝てるほどの差ではない。

そして接近戦による近距離での戦いになると明らかにガトウが有利であった。

ただ高畑もエヴァが言うほど戦いのセンスがない訳ではなく、元々高畑に戦い方を教えたガトウの方が高畑をよく知るという意味では有利だったということがある。

加えて高畑の欠点の一つとして自身より強い相手との戦闘経験が意外に少ないということもあった。

エヴァとの修行で咸卦法と居合い拳を習得したが、高畑がこの十年余りで戦って来たのは秘密結社完全なる世界の残党や信奉者の中でもたいした実力がない連中が多かったのだ。

肝心のアーウェルンクスシリーズの生き残りであるフェイトと最高幹部のデュナミスは高畑から徹底的に逃げていたし、強敵になりそうなのは粗方ナギ達により倒された後始末に近かったという事情がある。

まあそれでも場数をこなして人類最強クラスまでにはなったが、単純に自身より強い相手に対して実力を覆すような経験がないことは高畑の数少ない弱点と言えた。


「十分強いじゃないの。 必要なのは負ける経験か?」

そして横島だが高畑とガトウの戦いを見ながら高畑の戦闘データを解析していた。

高畑はガトウにはまだ及ばないと思っているがデータ上ではさほど差はない。

無論数値やデータには現れにくい経験や技術はガトウが上であるが、高畑はそれを考慮してもガトウの攻めをよく凌いでいる。


「だがアレには勝てんだろう?」

「アレって、ああアレか。 うーん、確かに厳しいかも。」

ぶっちゃけ高畑がこれ以上強くなってどうするんだよと思う横島だが、エヴァは高畑が強くなりたい理由が主に完全なる世界だと暗に語る。

横島も一応完全なる世界の情報には目を通してるが、正直高畑が戦うには些か厳しいと言わざる負えない。


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