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二年目の春

「この程度で動揺してどうする。 俺はシミュレーターが造り出した偽者だ。 さあ、かかって来い。」

目の前のガトウの声が仕草が態度が、高畑には何もかも懐かしく感じる。

それが作られた存在だと理解してもそれだけの衝撃なのだ。


「師匠、いきます。」

そして高畑はガトウに促されるままに咸卦法を使い戦いを始めることになる。

先制は高畑の豪殺居合い拳であった。

繰り出された咸卦法により更に強化された拳圧がガトウにまっすぐ放たれるが、当然避けられてしまう。

ガトウが避けた拳圧は霊動シミュレーターの壁に直撃して内部に轟音が響くが、その時にはすでに高畑は次の居合い拳を繰り出している。

高畑もさすがに全くの無策ではないのでガトウの動きを予測しながら通常の居合い拳と豪殺居合い拳を織り混ぜながら繰り出していくものの、ガトウは一切の反撃をせずに高畑から一定の距離を保ったまま避けるのみだった。



「高畑先生すげー!」

一方コントロール室ではお菓子を食べながら見物していた少女達が豪殺居合い拳の轟音に驚きの声をあげていた。

ちょっとした修行以外では詠春の映画でしか戦闘をみたことか見たことがなかった少女達にとっては何をしたのかは分からないようだが、凄まじい轟音が高畑の攻撃だとは理解したらしい。


「私も久しぶりに見るわ。 高畑先生の本気の居合い拳。 いわゆる拳圧による衝撃波なんだけどあの威力で直撃すればビルくらいなら一撃ね。」

「あんだけのスピードあるなら無理にその居合い拳っての使う必要ないんじゃあ。 所詮はただの衝撃波ですし避けやすいっすよ。」

「避けやすいって、居合い拳は気や魔力を放つ訳じゃないから察知するの難しいわよ。」

今の攻撃は何だと疑問の声をあげる少女達に刀子は解説というか説明役になるが、刀子の説明を聞いていた横島が避けやすそうだと語ると刀子は驚きながらその真意を尋ねる。


「居合い拳は気や魔力を直接察知するのではない。 タカミチの体の魔力の流れで見極めるのだ。 奴が居合い拳を使うときにほんの一瞬だけ拳に魔力を集め加速するのにタイムラグがある。 その気になればお前でも避けられるだろう。」

正直なところ横島としてはまっすぐしか飛んで来ない衝撃波など考えるまでもなく避けやすい部類に入るだけなのだが、信じられないように見つめる刀子に横島に代わりに説明したのはエヴァだった。


「それよりあの気と魔力の合一の方が凄いな。 こっちじゃ咸卦法って言ってるんだっけ? 異なる力を合わせるのは難しいなんてもんじゃないからな。 戦いにおける応用範囲も広いし変に居合い拳にこだわらん方がいいような気がするが。」

「だから貴様に協力しろと言ったんだ。 タカミチはナギやガトウに捕らわれ過ぎているからな。」

そして横島はと言えば居合い拳よりも咸卦法に興味を示し評価していた。

攻撃パターンがシンプルで強力な技だが読まれやすい居合い拳よりは、基本的な技能である咸卦法で強化をして普通に戦った方が脅威になるはずなのだ。

まあ技の一つとしてある分にはいいが、先程から高畑が乱発しているような使い方をする技ではないと思うらしい。

実際来ると分かっている攻撃を避けるのは一定のレベルになるとさほど難しくない。

ただエヴァからすると、だから横島に強力を求めたんだと言うだけだったが。




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