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二年目の春

「ガトウか。」

「精密なデータ不足なんで再現度は今一つだけどな。 高畑先生が一番戦いにくくて戦いたい相手はあの人だろ。」

一方コントロール室では高畑の対戦相手がガトウであることにエヴァが表情を一切変えることなく一言だけ名前を呟く。

土偶羅が新しき世界に来て一年で集めた膨大な情報にはガトウやナギなどの過去の戦闘データなども含まれていた。

元々赤き翼の戦闘データはメガロメセンブリアやヘラス帝国ではかなり集めていたこともあり、比較的楽に集めることが出来ていたが。

ただ霊動シミュレーターとして再現度を上げるには戦闘データ意外の思考データなどもかなり必要であり、正直ガトウの再現度は横島としては今一つである。


「あの人って確か木乃香のお父さんの友達だよね?」

「彼の名前はガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ。 元は魔法世界の連合の捜査官だった人だそうです。 詳しい経緯は不明ですが二十年前の魔法世界の戦争で赤き翼の仲間となり行動を共にしていたと。 現在でも高畑先生の師として有名で過去の経歴を生かし二十年前には秘密結社完全なる世界の捜査など裏方として活躍したようですが、赤き翼の情報と同じく詳細は不明らしいです。 それと約十年前にナギ・スプリングフィールドと同時期に行方不明になってる人です。」

そして見物客と化してる少女達であるが、対戦相手が以前詠春を題材にした映画で見た人だったことである意味少女達にも分かる人物だった。

ただ英雄の一人という漠然な情報しか知らない少女が多く、夕映が一般的なガトウの情報を詳しく語って教えている。


「時々思うけど夕映ちゃんってなんで成績悪いのか不思議よね。」

「夕映凝り性だから、興味があることは凄いんです。」

夕映が語る正確で分かりやすい情報に少女達は納得したように聞き入るが、円はなんで夕映の成績が悪いのか不思議そうであった。

テストなんかでは夕映に勝てる円だが、勉強以外の頭を使うことは勝てる気がしない。

のどかや木乃香なんかは夕映の性格を理解してるので驚きも何もないが。


「正直私も刹那もそんなに詳しく知らないわよ。 麻帆良の魔法使いのほとんどはフルネームすら覚えてないと思うわ。 一般的な日本人が何代か前のアメリカの大頭領を覚えてないようなものよ。」

ちなみに夕映の情報に目を丸くして驚いていたのは刹那であり、彼女はガトウの名前や顔すら知らなかった。

所詮は余所の遠い世界の偉人なので神鳴流で教わることもないし、西洋魔法に興味もなかった刹那が知らないのは当然である。

実際刀子ですらガトウのことはなんとなく噂程度でしか覚えてなく、聞かれても困ると複雑そうな表情をしていた。



「随分立派になったな。 タカミチ。」

さてシミュレーター内部の高畑は予想外の人物に心乱されていた。

ちょうどガトウのことを思い出していた時に現れただけに精神的な動揺は高畑本人が考える以上にあるし、目の前のガトウはシミュレーターの造り出した偽者だと頭を切り替えて戦いを始めようとするも絶妙なタイミングでガトウは口を開いてしまう。

実は異空間アジト版霊動シミュレーターは、その運用に必要なメインコンピューターの部分にアシュタロスの遺産の中枢であるコスモプロセッサー型システムを用いている。

これは日頃土偶羅が各種情報収集から工作に異空間アジト内の管理などにも使っているが、元々世界を瞬時に改変することすら可能である演算能力があるので霊動シミュレーターもまたその能力を強化することになっていた。

具体的には再現した存在との会話も可能だし、データさえ完全にあれば本人と同じ人格なども再現出来る。

まあこれも元々は戦闘訓練目的ではなく、あくまで各種実験のための強化の副産物であったが。




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