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その二

横島とかおりが年明けて最初に会ったのは四日のことだった。

三が日を家族で過ごしたかおりは四日になると都内の神社へと横島と共に初詣に来ていた。


「混んでますね。」

三が日を過ぎたとはいえ有名な神社に初詣に来たからか神社は結構混んでいて、横島とかおりははぐれぬようにと腕を組んで歩いている。

正式に交際していろいろ変わりつつある横島であるが、こうして一緒に外出してる時の態度も結構変わっていて腕を組んだりするのも本当に自然に出来るようになったし、いちいち周囲の目やカップルを気にしなくなったのは大きな成長と言えた。

付き合うまでがあまりにヘタレだったのでかおりとしては不安な部分もあったが、結果として告白してよかったと本心から思えるほど横島との関係が落ち着いたし自分を求めてくれることが嬉しく感じる。


「私の場合、どちらかといえば神社側の方に目が行きますわね。 いろいろ大変ですのよ。 酔っぱらいやスリなんかも結構居ますし羽目を外し過ぎる人も居ますから。」

ただ横島とかおりでは初詣に来たものの注目する視点が違いそれが共に新鮮だった。

横島は初詣客が気になるようであるが、かおりは幼い頃より闘竜寺にて初詣客を迎える立場だったので神社側の視点になってしまうらしい。


「なるほど。 しかし親父さんとうとう年越しちまったな。 家族なんだから闘竜寺と切り離して考えりゃあいいのに。」

「母はすでに戻る気はないみたいですわ。 私も戻ると再び父の人形にされますし。 私も母も父を心底嫌ってる訳ではありませんが正直宗教はもうこりごりというのが本音です。」

人混みの流れに乗り初詣を済ませると近場にあったコーヒーショップで一息つくが、横島はかおりと父の問題が年越ししてしまったことを少し呆れていた。

横島自身かおりの愚痴を聞くようにいろいろ状況を聞いているのですっかり事情に詳しくなってしまったが、寺と除霊術の継承と家族の問題をごっちゃにしたままのかおりの父があまり理解できないようである。


「宗教かぁ。 弓さんがそう言うなんてよっぽどなんだろうな。」

「美神お姉さまのようなGSとは別世界ですわ。 あまり悪く言いたくはありませんが結局は利権や権力があり古くからの伝統を乱す者は煙たがられます。 女が活躍するのもいい顔をされませんし。 父は父なりに信念があるようですし私のことを考えて後継者にとしたのでしょうが……。」

「なんつうか、本当時代劇そのものだな。 相撲とか歌舞伎みたいなもんか? 相撲とか歌舞伎は女が居ないし。」

かおりの話すオカルト業界の話は時々聞くが横島が知るオカルト業界とは全くの別世界であり、今更ながらに思えば令子や唐巣は変わり者なのだろうと密かに思う。

令子もあまり誉められたGSではないが他も似たり寄ったりなのは明らかだった。


「あとは弓さんの修行先がどうなるかだよなぁ。 あんまりややこしいとこじゃないといいが。」

「六道理事長はその点では信頼出来る方ですわ。 」

「あのおばさんがねぇ。」

「宗教とGSの分離を進めてますし、女性の地位向上も六道理事長のおかげですから。」

まあ横島としてはあまりオカルト業界に深入りする気はないし令子がその辺りの面倒なしがらみが嫌いなのは考えなくても明らかなので構わないが、唯一不安なのはかおりの新たな修行先だった。

かおりは六道家を信じてるようだったが、横島はプッツン親子のイメージが強いらしくいまいち信じられないようである。


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