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母からの伝言

「どうやら家の中は問題がないようだね」

それから念入りに家の中を調べたのだが、呪いに関わる物も盗聴器の類も存在しなかった

若干不安そうな夫婦も家に問題がないと知り安堵するが、唐巣は表情を緩めることなく原因の特定をしなければと考えを巡らせる


「この漬物美味いっすね」

一方横島は相変わらず座ったまま夫婦と談笑をしつつ、せっかくだからと夫婦が次々に出してくる食べ物を堪能していた

霊視ゴーグルでの霊視が終わった雪之丞とタイガーもお腹が空いたのか横島に続き食べ始めた為、夫婦が余計に多くの食べ物を出してくるのだ

唐巣とピートは厚かましい横島に引き攣った表情を浮かべてるが、心眼が霊視しており横島としては仕事をしてるつもりである

加えて夫婦は若い横島達が美味しそうに食べるのが嬉しいらしく、自家製の漬物まで出していたのだった

本当にもてなし好きな夫婦である


「あのね、横島君……」

盗聴器の類がないのでもう友人のような演技は必要ないと言いたげな唐巣だが、夫婦が喜んでるため注意も出来ずに苦悩していた


「この後どうなるんでしょう?」

「引き続き調査しますよ。 それにおおよその相手は分かってますし」

そんな談笑している横島達だったが今後の方針を夫婦が尋ねると、横島は半ば勝手におおよその相手が分かってるといいピートやタイガーを驚かせる

唐巣と雪之丞は驚きはないが唐巣は横島と同じくおおよその相手の検討がついてるし、雪之丞は横島が未来から来た関係で知ってるのだろうと考えていた


「横島さん、もう相手が分かったんですか!?」

「お前らもちょっと考えれば分かるだろ。 呪いが始まってからの変化を考えてみろよ」

驚き本当かと尋ねるピートに横島は相手を推測する材料を話していく

呪いの影響は直接的には悪夢だが、仕事をクビになったことや友人が離れた件も無関係ではない可能性が高い

そう考えると答えは自ずと導き出されるものだった


「つまり依頼人に近い人物だと?」

「多分な。 友達や会社関係が変化はしたがご近所なんかは変わってないらしいからな。 周りの人間を無差別って訳じゃないみたいだし、相手を特定して呪いで脅したんだろ」

横島の言葉から犯人は近い人物の可能性が高いと気付くピートだが、彼は一つ気付いてなかった

先程から横島と夫婦が談笑してる内容に、ご近所付き合いや親戚との関係なんかが混じっていた事実に……

横島もただ無駄話していた訳ではなく、それとなく呪いの影響を聞き出していたのだ


(まさか……、それを探る為に先程から……?)

そして横島と同じく状況から犯人がある程度特定出来ていた唐巣だが、もちろん横島が夫婦と談笑していた会話も聞いていた

唐巣自身もその会話を考慮に入れて相手を絞ったのだが、唐巣は横島が意図的に夫婦から情報を聞き出した可能性に気付いている

それは以前の横島が普通にしていた行動故に先程までは非常識さに頭を悩ませていたが、もし仮に狙って話をしていたとなれば全く違うことになるのだ


(考えすぎか。 たまたま夫婦が話した内容から組み立てただけだろう)

そのまま少し考え込んだ唐巣だが、流石に横島が全てを計算していたと思えなかった

ただ単純に夫婦と会話した内容が偶然のヒントになったのだろうと考える方が自然である


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