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二年目の春

一方予期せぬことの連続に刹那は戸惑っていた。

魔法使いの中には魔法球という独自の私有空間を持てるレアアイテムがあると知ってはいたが、一介の神鳴流剣士でしかない刹那が見たことあるはずがない。

しかも夜の暗闇の中でも確かに見えた街の明かりと住人のようなハニワ兵に驚きの連続だったというのが本音である。


「あの、私も頂いていいのでしょうか?」

「いいんじゃないかしら。 ただ他の魔法使いとか関係者には詳しい機能は秘密にして。 通信機となら言ってもいいけど。」

そんな刹那は何故かバレンタインにチョコを渡してないのに木乃香達と同じ腕時計型通信機を貰ってどうしていいか分からないようであった。

実は刹那の他にも高畑とエヴァとチャチャゼロにも茶々丸にプレゼントを渡した後に同じものを渡されているが、誰一人そこに文句や不満を口にする者は居ない。

腕時計型通信機は予備も含めてそれなりに数を作ったらしく、横島がこれをこのあと近右衛門達関係者に配る気なのは誰もが理解している。

結果としてバレンタインを渡してない刹那やエヴァも貰うことになったが、その程度で怒る者は居ないようだ。

まあ内心は若干の不満を持つ者は居るかもしれないが、口に出すほどではないのかもしれない。

刹那に関しては刀子が連れてきた人だし、エヴァは横島の周囲でも特別な存在だと認識されているためであろう。


「ねえねえ、これどうやって充電するの?」

「充電はいらんぞ。 それ電力じゃなくて魔力で動くからな。 テレビも見れるしラジオも聴けるから便利だろ。」

結局茶々丸以外は貰うことになった一同だが、茶々丸は魂はあるが純粋な生命体ではないガイノイドなので同じものは使えなくあげられないだけである。

横島は続けて説明書を配るが、美砂達三人とエヴァとチャチャゼロは読む気はないらしく横島を質問攻めにしていた。

この腕時計型通信機は元々が携帯電話やスマホを参考に作ったので基本的な使い方はほとんど同じなのだ。

ただエヴァを筆頭に機械に疎いメンバーは扱い方が分からないらしく四苦八苦していたが。

ちなみにこの腕時計型通信機は基本的に本人の余剰霊力と大気中の魔力を動力源にしているので充電は不用である。

魔法に関しては完全に魔力を源にしていて使用者本人を介さずに腕時計型通信機を介して魔力を使うので、理論上は使用者の資質に関係なく大魔法も使えることになっていた。

まあこの辺りはほとんど魔法アプリの技術を拝借しただけだが。


「これで普通に電話とかメール出来たら最高なんだけどね。」

「技術的にはそんなに難しくないんだけどな。 ただ既存の電波を利用するにはいろいろ面倒な手続きとか工作が必要なんだよな。 しかも日本だと電話会社は独占状態だし。」

その後しばらく説明すると一部の者を除きほとんどはある程度使えるようになるが、明日菜はここまで出来るならば普通に電話やメールが出来たら携帯要らないのにとつぶやく。

そんな明日菜に横島は少し苦笑いを浮かべて技術的には難しくないと語る。

元々は通信機として開発したので既存の電波を利用するのは容易なのだが、問題はそれを正攻法でするには電話番号やメールアドレスなどが必要になることだろう。

異空間アジトのメインシステムを中継すればそんな物がなくても電話とかメールが出来なくもないが、明らかに犯罪であり未来ある少女達にはおすすめは出来ない。

まあ既存の電話会社の回線で普通の携帯電話のように誤魔化して使えなくもないがどうせ料金を払うなら別に普通の携帯電話でいいし、基本的に一般人には秘匿しなければならない物なので既存の電話として使うメリットはあんまりなかったりする。



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