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二年目の春

「しかし、相変わらず凄いね。」

ホワイトデーのお返しである腕時計型通信機は少女達にとって新たなオモチャのようであった。

元々横島の世界の携帯電話やスマホを参考に作った物なので地味にカメラや動画撮影機能なんかもあり、少女達はいろいろ機能を使って遊び始める。

そんな少女達を見て高畑は何とも言えない表情で横島に声をかけていた。


「いや、俺が作った物じゃないっすよ。 ちょっと改良はしましたけどね。 魔法の機能もほとんど他から拝借した技術ですし。」

また問題になりそうな物をと内心では思う高畑とエヴァであるが、横島としては噂に聞くパクティオーカードがあるんだし通信機くらい大丈夫だろうとしか考えてない。


「そうそう、茶々丸ちゃんにもバレンタインのお返しがあるんだ。 まさか一緒に来るって思わなかったから別物だけどな。」

そんな横島だが茶々丸へのホワイトデーのお返しも用意していたらしく、こちらはラッピングもしてあるプレゼントを渡す。


「ありがとうございます。」

「茶々丸さんもお菓子じゃないんだ。」

「お菓子食えんからなぁ。」

「そう言えば茶々丸さんってロボットなんだっけ?」

通信機で遊んでいた少女達であるが、横島が新たにホワイトデーのお返しとして茶々丸にプレゼントを渡すと興味があるらしく再び集まって来る。

日頃麻帆良では街の中心部を包む結界のせいで、茶々丸が人間ではないことはあまり騒ぎにならない程度に認識を逸らされていた。

少女達も元々茶々丸がクラスメートとして違和感を抱かない程度に認識を逸らされていたが、魔法を知らされて以降は茶々丸が人間ではないと認識している。

ただ同時にハニワ兵とも知り合ったのでハニワ兵よりは普通にありそうな茶々丸に少女達は特に騒ぐことはなかった。


「正確にはガイノイドです。」

「やっぱり魔法ってよりSFっぽいよね。」

まあ世の中には魔法があると言うのに自分達の周りは魔法よりSFみたいだとしみじみと感じるようであるが。


「うわー、綺麗なペンダント。」

「茶々丸さん付けて見てよって……。 茶々丸さん?」

横島のお返しはシルバーのコインのような物が付いたペンダントだった。

茶々丸は自分はガイノイドなので似合わないと口にするも美砂達に進められるまま付けてみるが、次の瞬間横島以外の誰もが絶句してしまう。


「そうか、幻術か。」

最初に我に帰ったのはエヴァであるが、ポツリと少女達や自分が驚いた種明かしをする。

実はペンダントを付けた瞬間、茶々丸が普通の人間のような見た目に変化したのだ。


「ロボットだって騒がれるからあんまり麻帆良から出られないって前に言ってただろ? だから誤魔化す為のアイテム作ったんだ。」

それは変化の術がかかった魔法のペンダントである。

これは完全に横島が作った物だが術自体は普通の変化の術の一種で、それをペンダントについてるシルバーコインに付与した物になる。


「……これが私ですか?」

ちなみに自分では実感がない茶々丸であるが、人間に化けた自分の姿を鏡で見ると絶句してしまう。


「この腕時計といい、いつの間に……。」

「暇な時間にちょこちょこっとな。 その腕時計型通信機はともかくペンダントは作るの簡単だしな。」

「簡単って……。」

驚き絶句する茶々丸に横島は満足げだが、刀子や夕映とのどかに雪広姉妹なんかは横島の非常識っぶりに複雑そうな表情を見せる。

何時から準備していたのかと聞いても、ここ数日の暇な時間にちょこちょこっと作ったと聞くとどう言葉を返していいか分からないようだ。

バレンタインが本当に嬉しかったのは十分に伝わったが、ある意味いままで魔法を隠していて遠慮していた部分の遠慮を止めただけでこの状態なのだから反応に困るらしい。

まあ実は年齢詐称する薬や姿を変えるマジックアイテムはあの世界にも魔法世界にはあるので、茶々丸のペンダント自体は大きな問題はない。

ただバレンタインのお返しくらいでそんな物を簡単に作ってしまう横島には何処か不安も感じるようであった。
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