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二年目の春

一方エヴァと酒を飲んでいた横島だが、数体のハニワ兵が横島の元にジュラルミンケースを運んで来ていた。

彼らはホテルの従業員ではないらしく白衣のような衣装を着たハニワ兵であり、そのどこかいつもと違うハニワ兵の雰囲気にエヴァ達も興味ありげに視線を向けて少女達と刀子も集まってくる。


「なにそれ?」

「ホワイトデーのお返しにと思ってな。 前にパクティオーカードみたいな便利なアイテム欲しいって言ってただろ?」

またなんか始めるのかと期待と不安が入り交じった様子の少女達であるが、横島がジュラルミンケースを開けると中には腕時計が入っていた。

見た目は何処にでもあるようなアナログの腕時計であり、学校でも使えるようにとオーソドックスなデザインである。


「便利なアイテムって、その腕時計が?」

「試しに付けてみれば分かるよ。」

一応色や形が多少種類があるので少女達と刀子は半信半疑ながら腕時計をはめてみると、一様に驚きの表情を見せた。


「何これ? メニュー? 初期設定? いやなんで文字が見えるのよ。」

それはとても不思議な時計で腕にはめると、本人の視界に本人にだけしか見えない透明なスクリーンが現れて携帯電話のようなメニューが見えている。


「スゲー!」

「でもやっぱり魔法ってよりSFっぽいね。」

まるでSFかスパイ映画にでも出てきそうなその時計に少女達のテンションは上がり、使い方を尋ねるまでもなく自力でいじり出す。


「そいつはカオス式小型通信機の改良型でな。 同型の通信機とテレビ電話みたいに使えるんだわ。」

「カオス式?」

「開発者の名前だよ。」

刀子とタマモとさよは別だが、他は携帯電話が当たり前の現代っ子だけにすぐに使い方をマスターするが基本的は音声入力なので使い方は簡単なのである。

横島は少女達の驚く様子に満足げであったが、それはドクターカオスの晩年の発明品の一つを改良した物であった。


「横島君、この魔法ってのはまさか……。」

ただし一人だけ若干引きつった表情をしていたのは刀子であり、彼女は今回横島が改良したというか機能を追加した部分に気付き恐る恐る尋ねていた。


「そうっすよ。 その時計が魔法発動体であると同時に事前に登録した魔法の行使も出来るんっすよ。 ただその機能はまだ試験段階なんで今は対物対魔法障壁しか入れてませんけど。」

横島は自信ありげに説明していくがその説明に刀子はすぐに頭を抱えてしまい、エヴァは呆れた表情をしている。

この腕時計型通信機は元々横島の世界においてドクターカオスが新たな通信機として販売を目論んだ物であり、基本スペックは同年代のパソコン並みにあったりする。

今回横島はそれに魔法という新たな機能を加えたが、基本的な技術である魔法のデータ化は元々この通信機とは別に異空間アジトでカオスと魔鈴が研究していたことでもあるし、実は土偶羅が超鈴音の未来世界を調べた際に手に入れた未来技術である魔法アプリの技術も勝手に拝借していた。


「あの、横島君。 こういうの困るんだけど。」

「大丈夫っすよ。 本人登録すると後は他人にはただの時計としてしか使えませんから。 それに下手に第三者が分解とかしたら自爆する機能もありますし。」

このカオス式小型通信機を使えば素人でも魔法を使えると知り顔色が青ざめる刀子は、外部に流出すると大変なことになると口にするが横島は一応対策をしていて最初に本人登録すると以後は第三者には使えないようにはしているらしい。


「えーと……。」

「基本的には符術と大差ないんですよ。 予め用意しておいた術式を行使するだけっすから。」

横島的には外部に流出した場合の対策は取っていたが、ぶっちゃけ刀子にはそれで大丈夫なのか判断できない。


「全く、貴様という男は……。 茶々丸解析出来るか?」

困った刀子は高畑とエヴァに視線をむけると、エヴァは軽くため息をつき茶々丸に解析させてみる。


「私のセンサーでは解析不可能です。 外部からではただの時計としてしか判別出来ません。」

とりあえず茶々丸に解析出来なければ問題ないだろうて判断したエヴァであるが、技術の違いからか茶々丸ですら解析出来ずにまあ大丈夫だろうということになる。


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