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二年目の春

一方異空間アジトでは相変わらず少女達が魔法の練習をしていた。

ただ正直なところ少女達の中には本当に自分にも魔法が使えるのか実感出来ない者もいる。

別に横島達を疑っている訳ではないが魔法を使える自分をイメージ出来ないといった方がいいだろう。


「そう言えば、さやかさんは魔法のこと前から知ってたんですよね? 練習とかしなかったんですか?」

そんなそれぞれの思いを持ちながらも魔法の練習を続ける少女達であるが、ふとのどかは自分達より年上て以前から魔法を知ってたはずの雪広さやかに疑問に感じていたことを問いかけていた。


「魔法の存在は高校に進学する時に教わったわ。 でも魔法は習わなかったの。 こういう言い方をすると感じが悪いかもしれないけど私もそれなりに忙しいから。」

自分達より以前から魔法を知ってた中で魔法を唯一使えないさやかにその疑問を尋ねたのだが、さやかは少し考えるような仕草をして魔法を習わなかったと告げる。

雪広家の次代としてさやかが学ぶべきことは多く決して暇な訳ではない。

それは会社を継ぐ為の勉強ばかりではなく、女性としての習い事なども含まれていた。

その上学校での活動もあるので、秘匿していて人前では安易に使えない魔法の優先度は決して高くはない。


「小さい頃から習ってたらまた違ったんでしょうけどね。 高校に入ってから魔法を覚えても正直使い道無さそうだったから。 でも魔法自体は興味があったから魔法関連の勉強はしてるわよ。」

彼女自身魔法には興味はあったが、それは魔法を使いたいというよりは学問としての魔法に興味があった。

科学とは別の法則の元にある魔法やそれと同様に一般には隠されている様々な秘密には興味があり、そちらは勉強しているらしい。

まあ雪広家の次代としては魔法を使うよりも、魔法や魔法社会を含めた秘匿された分野とどう関わり付き合うのか学びなければならないというのもある。


「限られた時間で何を優先させるのか、普通は中学生でもきちんと考えた方がいいのよ。 横島さんは本当に時間を作れるからそこまで悩まなくてもいいんでしょうけどね。」

結局さやかは魔法が必要ならば魔法使いを雇う方がいいと判断して魔法そのものよりは魔法に関わる学問や社会を学ぶ道を選んだが、それは彼女の立場としては当然の選択であろう。

ちなみに現状でさやかが少女達と共に魔法を習っているのは、他ならぬ横島が事実上時間を作れるというか増やせるからである。

必要ならば異空間アジトやエヴァの別荘で時間を文字通り作れるからであり、それに時間を作りすぎても老化防止魔法薬があるので人より老けることもない。

そこまで余裕があるならば魔法を習うのも悪くはないと思うようであった。


「そう言えばそうなんですよね。 本当に時間を作っちゃうですもんね。」

「時間を作れるならお金を出して買いたいという人はいくらでもいるわよ。 まして若さを維持出来るとなれば尚更。 うちのお母様も例の魔法薬のおかげで最近随分機嫌がいいみたいだもの。」

この時のどかは慣れって怖いなと改めて感じる。

人は決して平等ではないが、同じく流れる限られた時間で生きることだけはある意味平等なはずなのだ。

横島やエヴァはそれを当然のように変えてしまっている。

それはもしかすれば神の領域というか、横島の場合は魔王の領域に足を踏み入れることかもしれないとのどかは思う。

正直なところそれがどれほど凄いことかはのどかには想像も出来ないが、一つはっきりしているのは自分達がたいした代償もなくそれらの恩恵を一番に受けていることだろう。

これが物語なんかだといつかしっぺ返しが来そうで怖くもあるが、横島を見てるとどうしてもそんな危機感なんかは持てないのが本音だった。


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