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麻帆良祭への道

(なんだかんだ言っても権力争いにしか見えないのよね)

根本が神鳴流剣士である刀子には、魔法使いや魔法組織も権力争いをしてるようにしか見えなかった

別にそれが悪いとは感じないし近右衛門達が麻帆良や刀子達のような末端を守ってるのも理解はしてるが、反面で一剣士である刀子には遠い世界だし興味もない

はっきり言うと刀子は魔法組織を辞めて、女性として普通に生きたかった


(女好きで結構モテそうだし結婚したら浮気に悩まされそうだけど、こんな生活してるよりはその方が幸せな気もするわね)

カウンターの中で洗い物をする横島を見て、刀子はふと横島が旦那だったらと想像を始めてしまう

人懐っこいと言うか割と誰にでもフレンドリーな横島は見た目よりもモテるだろうと考える刀子だが、血生臭い世界で悩むよりはよほど幸せではないかと考えていく

神鳴流剣士の過去や魔法組織に所属した過去を受け入れて支えてくれる男性としては、横島のように裏の力を持ち表で生きる男が最適かもしれないと感じるのだ


(夫婦で喫茶店ってのも悪くないわね。 たまに神鳴流の仕事をすれば食べるのには困らないし……)

細かい価値観の違いや喧嘩は当然あるだろうが、喫茶店でゆっくりとした人生を送るのも悪くはない

少なくとも仕事に追われる現状よりはよほど幸せだろうと、シミジミ感じてしまうようだ

過去の失敗から物語に出てくる運命を感じる愛や恋などないだろうとドライな価値観の刀子は、現実的に横島を値踏みするような視線を送っていた


「どうかしましたか? これサービスです」

どこかいつもと違う刀子の視線に横島は若干首を傾げつつ、サービスとしてわらび餅を出す


「なっ……なんでもないわ!!」

そんな横島に見つめ返された刀子は顔を真っ赤にして慌ててコーヒーを飲む

どうやら彼女の想像はかなり深い段階まで入っていたらしい


葛葉刀子

彼女の一番の悩みは世界の平和でも魔法協会の行く末でもなく、自身の女性としての幸せだった



「あっ、葛葉先生や」

刀子の顔の赤みが収まった頃、学校が終わった木乃香がやって来る


「こんにちは、近衛さん。 早いですね」

「麻帆良祭の出し物で手伝って貰ってるから、報告に来たんよ~」

木乃香が声をかけると刀子はすかさず教師の顔になる

その変わり身の早さに横島が内心で驚く中、二人は割と親しいようで会話をしていく

実は刀子は近右衛門の友人の娘として、麻帆良に来た頃の木乃香に紹介されていたのだ

木乃香の護衛を勤めるに辺り顔見せしていたのである

その後は近右衛門を交えて食事したり近右衛門が忙しい時は木乃香の相手をした事もあり、教師と生徒と言うよりは友人に近い関係なようだ


「二人とも知り合いだったんだな」

「おじいちゃんの友達の娘さんなんや。 麻帆良に来たばっかりの頃は、おじいちゃんが忙しい時は遊んでくれたんよ」

実は横島は刀子と木乃香の裏や表の関係は報告で知っていたのだが、まさか知ってるとも言えずに驚いた様子を見せていた


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