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二年目の春

一方この日の放課後になると茶々丸は超鈴音に話があると伝えて大学部にある彼女の研究室を訪れていた。


「話とは何ネ?」

少し元気がないようにも見える茶々丸を前に超はいつもと変わらぬ様子で声をかける。


「超、貴女は何のためにこの時代に来たのですか?」

この日朝から茶々丸の様子がおかしいのは超のみならず多くのクラスメートも気付いていた。

美砂達などはなんかあったのかと心配そうに声をかけたほどで、超もまた茶々丸の様子がおかしいことを気にしていた。

しかしそんな茶々丸から唐突に言われたあまりに直球過ぎる言葉に、超は茶々丸を見極めるように見つめ一緒に居る葉加瀬は驚き固まっている。


「それを聞いてどうするネ? 私の目的を否定するつもりカ?」

「私は貴女がこの時代の人々から未来を奪うつもりなのだと考えてます。 もしそれが間違ってなければ私は貴女を止めたいと思って来ました。」

茶々丸から放たれた疑問に超は答えないまま逆に茶々丸の目的を見極めるような言葉で返す。

それに対して茶々丸は言葉を選びつつも自分が超を止めたいと考えてることを素直に話していた。


「今からでも遅くはありません。 マスターや学園長に全てを話して別の道を探すべきです。」

「残念だがそれは出来ないし、私は言葉では止まらないネ。 さあ、どうする?」

エヴァから超の計画を聞かされ決別すると知った茶々丸が一晩考えた結論は、自分が超を止めたいとのことだった。

茶々丸にはもっと他の道があるような気がしたし、超ならば尚更それを見つけられると思うのだ。

しかし超は茶々丸の言葉を否定したばかりか、更に言葉では止まらないと茶々丸に問いかける。


「私は貴女によりこの世に造り出された恩は決して忘れません。 しかし私は私を必要としてくれる人達の為に必ず超、貴女の計画を止めます。」

それは茶々丸にとって苦渋の決断であった。

ただどうしても譲れない一線が茶々丸にはある。


「面白い。 やってみるといいネ。 お前に止められるなら本望ヨ。 ただし生半可なことでは私は止まらないから覚悟することネ。」

葉加瀬がオロオロとしてどうしたらいいか分からない様子の中で、超は自分に反旗を翻した茶々丸の姿に本当に心底面白そうな笑みを見せていた。


「これは選別ヨ。 持っていくといいネ。」

出来るものならやってみろと断言する超は、自身のパソコンを起動させると何やら作業して一つのUSBメモリーを茶々丸に手渡す。

茶々丸はそのまま超と葉加瀬に頭を下げて研究室を去っていくが、超はその後ろ姿に先程までは見せなかった寂しさを僅かだがその表情に見せていた。


「超さん、いいんですか?」

「この時代に生きる者なら当然の選択ネ。 それに誰かに止められるとしたら茶々丸に止められたいと思うのは本当ヨ。」

茶々丸が帰ってようやく我に帰った葉加瀬は超に本当にこのままでいいのかと尋ねるも、超は嬉しさと寂しさの入り交じった表情で茶々丸の選択を受け止めている。

本来ならばそれは超の祖先でもあり、この先の未来の鍵を握る存在であるネギに託したかった役割だったのかもしれない。

ただ自らがこの世に産み出した茶々丸ならば、その役割を十分に担えるとも思うようだった。




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