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平和な日常~冬~6

「この依頼、結構大変そうっすね。」

その夜横島宅のリビングでは横島と坂本夫妻と藤井で軽く酒を飲んでいたが、話題は先程夕映が頼んだ依頼の話であった。

依頼は何件かあったが一番期限が近く悩む春祭りの依頼は麻帆良亭の料理を格安で振る舞うイベントにしたいとの内容であり、依頼主のサークルが資金などを出すもののかなり大量に作らねばならずに大変そうなのである。

まあ報酬も悪くはないので坂本夫妻が悩むのも分かる依頼ではあるが。


「カレーかビーフシチューならなんとかなるか。 しかしそれでもちょっとな。」

「先生、手伝わせて下さい。」

正直坂本夫妻としてはやりたい気持ちにかなり傾いているが、料理を振る舞う以上は妥協は出来ないので悩みどころだった。

年齢からくる体力の低下なども無いわけではないし、何より慣れない野外で料理する経験はあまり無いのだ。

そこに藤井はすかさず手伝わせて欲しいと頼むが、坂本夫妻はまた自分の店を休ませるのもどうなんだと思案顔である。


「仕込みなんかは店を使うといいっすよ。 あと人手が必要なら俺も手伝いますし、木乃香ちゃん達もやるなら手伝うつもりですよ。」

ただ手伝いという意味なら横島も手伝うつもりであり、店を貸したりと協力もするつもりだった。

そもそも夕映達は先程はあえて言わなかったが、仮に坂本夫妻が依頼を受けるなら当然自分達も手伝うつもりで居る。

まさか坂本夫妻に依頼を持ち込んであとは知らないと言うつもりはなく、夕映達は流れ的に手伝うのをほぼ規定路線として捉えていた。


「全くそろいも揃って……。」

一方藤井はダメだと言っても勝手に来る人間であり半ば仕方のない奴だと坂本夫妻の夫は呆れ気味だが、実は横島どころか夕映達も手伝うつもりで動いてるのを坂本夫妻も理解している。

妙に手慣れてる夕映達にも何とも言えない心境になるが、夕映達はある意味横島と関わってこの程度の問題が拡大するのは予測済みであった。

木乃香達を筆頭に宮脇兄妹に新堂など横島と深く関われば何故かみんな忙しくなるのだ。


「わたしもおてつだいする!」

そしてタマモは噂に聞く春祭りで何やら楽しそうなことをするのだと思ったらしく、瞳をキラキラと輝かせて当然のように手伝うと宣言する。

実際タマモにとって横島達の手伝いをするのは何より楽しいのだが。


「滅多にないほど有りがたい話ではあるのよね。」

なんというか周りはもうやる気になっていることに坂本夫妻は少し困った表情を見せるが、依頼自体は有りがたい話であり多くの人に料理を振る舞えるのは光栄なことだと妻は語る。

それにこの手の依頼をやるならば坂本夫妻にとって早い方がいいのも確かで、年々衰えていくのは止めようがない。

本音を言えば今までには経験がないことなだけにやりたいと言う気持ちが強かった。


「タマモも去年の納涼祭では頑張ったもんな。」

「うん、まかせて!」

結局坂本夫妻が悩むのは今の自分達では周りに迷惑をかけるからだが、藤井ばかりか横島やタマモやさよもやる気になるといつの間にか依頼を受ける方向で話が進んでしまう。

横島自身も自分が祭りで店を出すかと言われるとやらないと言うだろうが、坂本夫妻がやるならばそれはそれで楽しみだと普通に期待していた。

まあ元々横島は誰かの元で働くのは責任がなくて気楽でいいと考えるタイプなので、そういう意味でも自分が中心にならないならいいらしい。


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