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平和な日常~冬~6

この日坂本夫妻と藤井は当然ながら横島宅に泊まることになる。

藤井は流石にそこまで世話になっていいのかと戸惑っていたが、迷った段階でタマモに押しきられていた。

前回同様タマモとしては当然今回も坂本夫妻は泊まると思っているし、坂本夫妻と仲がいい藤井も一緒にと誘うのはある意味自然なことだった。

まあ坂本夫妻としては孫より幼いタマモに泊まってと頼まれたら断れないのが本音なのだろう。

実際問題明日の営業を考えたら横島宅に泊まるのが一番楽なことも確かな訳だし。


「……随分本格的に教えてるね。」

結果として当然夕食も横島達と一緒に食べることになるが、この日は夕食のメインの一品にとぶり大根を作っている。

実際には横島が教えながら木乃香とのどかで作っているが、普通に何処かの店でも出てきそうなほどの出来上がりに藤井はやはり唖然としていた。

まあ料理店などではまかないとして本職以外の料理を作る事はさほど珍しいことではないが、ぶり大根などは奥が深く比較的難しい部類の料理に入るのに横島は相変わらずの軽い調子で本格的に教えてるのだから驚きもするのだろう。


「うちはいつもこんな感じっすよ。 夕食は料理を教えるのにちょうどいいっすからね。」

「いやまあ、そうなんだろうけどね。」

やってることは特に珍しい訳ではないが横島と木乃香やのどかの見た目ですると、それはやはり珍しいものに見えてしまうようである。

特に横島は木乃香とのどかに合わせて丁寧に教えていて、どちらかと言えば職人気質の残る料理人の世界では少し珍しくもあった。

というか料理学校ならばともかく職場において自身が時間と努力を重ねて積み上げて来た技術をそう簡単に一から十まで丁寧に教える人間なんてそうは居ない。

普通はそんな時間がないという理由もあるだろうし、技術や経験は財産であるとも言えるからそれが当然なのだろうが。

ただその点に関しては、一般の料理人と横島の認識というか意識の違いは大きい。

横島にとって木乃香達は身内のようなものであり、弟子や従業員だとの認識はほとんどない。

親が我が子に技術や経験を伝えるようなものであり、一般の師弟関係や従業員と比べるのは無理がある。


「このお漬物美味しいわね。」

「それは自家製なんっすよ。 良かったら帰りに少し持って帰って下さい。」

さて藤井が横島や木乃香達に驚くのもさほど珍しくなくなった夕食時であるが、和食は坂本夫妻にも好評で妻は特に横島の自家製の漬物が気に入ったようだ。


「ここは地下室があるからお漬物漬けるにはいいのよね。 私もここに住んでた頃はよく漬けてたわ。」

「そうですね。 俺は他にもピクルスとかジャムとか手作りしてますよ。」

そのまま横島と坂本夫妻の妻は漬物を漬けるコツなんかで話が盛り上がるが、少女達の何人かはやはり横島には若さが足りないなと思うことになる。

まあ普通は若い男性が漬物を漬けたりしないのでそんな印象があるようだが、若さが足りないと感じた少女もまた普通に横島の漬物は食べているが。

というか実年齢が三十代で見た目年齢が二十歳にしては横島はやっぱり変だというのは、身近な少女達の共通認識であった。





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