一方雪之丞は、ＧＳ試験以来勉強の時間が大幅に増えていた

もちろん体を動かす修行も行われているが、どちらかと言えば雪之丞の気分転換にやっている程度である


そんな勉強時間が増えた最近の雪之丞の生活は、一日のほとんどを魔鈴の自宅で過ごしていた

朝起きたら魔鈴の家に行き朝飯を食べて、日中は勉強や修行をして夕飯を食べて帰る日がほとんどである

魔鈴は店の方があるので日中は雪之丞に勉強を教えてないのだが、それでも魔鈴の家に居れば食事が食べられるので必然的に魔鈴の家にほとんど居るようだ



そんなある日のこと、一人で勉強している雪之丞をピートが尋ねて来ていた


「頑張ってるみたいだね」

「よう、ピートじゃねえか。　覚える事が多過ぎて全然覚えれねえよ」

読んでいる霊能関係の本をピートに見せた雪之丞は、少しうんざりした様子である


「僕も日本に来てからは毎日勉強してるよ。　霊能以外でも日本語や高校の勉強とか覚える事は山ほどあるからね」

慣れない勉強で疲れてる雪之丞を気遣いつつ、ピートは自分の勉強の苦労を話していく

学校など行った事のなかったピートの見えない苦労は、普通の人間とは比べものにならないほどだった


「どこも同じだってか。　タイガーも勉強に苦戦してるらしいしな」

仲間内で唯一正式なＧＳになっているピートですら、現在も勉強している事実に雪之丞は少しげんなりした表情を浮かべる


「霊能関係は無理だけど、一般の勉強なら愛子さんが得意ですよ。　僕達も高校で良く教わってましたし。　魔鈴さんが忙しいなら頼んでみたらどうですか？」

勉強に疲れた表情の雪之丞を見て、ピートは愛子を思い出していた

赤点ぎりぎりの横島・タイガーや、日本に不慣れなピートに昼休みや放課後を使って勉強を教えていたのは愛子である

学校の妖怪を何十年もやっていただけあって、大学卒業程度の学力は普通にあるのだ


「あいつか……、俺あんまり知らないんだよな」

卒業パーティー以来たまに遊びに来る愛子を思い出す雪之丞だが、人付き合いが苦手であまり話した事が無かった

ちなみに魔鈴の家で雪之丞に勉強を教えられるのは、魔鈴だけである

横島は雪之丞と同じくいろいろ勉強している身分だし、頼りになりそうなタマモも実は人に教えるほど現代の知識が無い


「今度会った時に聞いてみたらどうですか？　愛子さんなら喜んで教えてくれますよ」

迷う雪之丞に、ピートは一度話してみればいいとアドバイスしていた



その後愛子に勉強を教わる話を魔鈴達に相談した結果、横島が一度本人に聞いてみる事になる

現在雪之丞の師匠である魔鈴だが、店の方もあるため忙しいのだ

横島やタマモやシロに店の仕事を教えてはいるが、まだ魔鈴が店を抜けるほど仕事が出来る訳ではない

夜は横島に勉強を教えているので問題無いのだが、日中の雪之丞の勉強まで魔鈴は手が回らなかったのだ


最終的に勉強を教えて欲しいと頼まれた愛子が断るはずも無く、とりあえず放課後の時間に雪之丞に勉強を教えていく事になった