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平和な日常~冬~6

「そういえばさ、西洋魔法使いは人と契約するんでしょ? 仮契約だっけ? 刀子さんは誰かと契約してないの?」

その日の夕食後には閉店した店内で少女達が魔法の練習をしていたが、杖を持ち呪文を唱えるだけという練習に飽きた美砂が魔法使い用の教本を見ながらふと仮契約の話を刀子に尋ねていた。

仮契約に関しては以前に刀子が西洋魔法使いについて教えた時にちらりと説明したのだが、美砂が見てる教本にも書いてるらしい。


「してないわよ。 私は魔法使いというより神鳴流剣士だし、神鳴流は基本的に一人で戦えるもの。」

「いろいろ便利そうなのに。」

「若い子は恋人とか親しい友人で契約してる子がほとんどよ。 本来は戦闘におけるパートナーになるんだけど、麻帆良だと嫌がらせ程度の戦闘しかないし戦闘のパートナーとか必要ないもの。」

仮契約すれば念話や従者召喚が可能になりアーティファクトという専用のマジックアイテムが貰えるのだが、元々神鳴流剣士であり神鳴流に誇りを持っている刀子は学生に指導する程度に西洋魔法は使えるがそれ以上は興味がなかったのが本音にある。

一方の美砂はいつ使えるようになるか分からない魔法より仮契約に興味があるようなのだが、事実上麻帆良では魔法使いの学生がほとんど誰かと仮契約してると聞くと余計に興味を持つ。


「マスターは、……聞くまでもないか。」

「俺の世界にはなかった契約だな。 しかしそう簡単に仮契約とかして大丈夫なんっすか?」

「大丈夫みたいよ。 ただ恋人と仮契約すると別れた後契約解除するかしないかでだいたい揉めるらしいけど。 特にいいアーティファクトに当たると契約解除するのは勿体ないけど別れた恋人といつまでも契約しててもね。 話だけだと学生のおもちゃみたいだけど、アーティファクトは意外に強力な物とか出るらしいから馬鹿には出来ないのよね。」

そのままなんとなく美砂が始めた仮契約の話に他の少女達も食い付き興味を持ち始めるが、実は横島も仮契約に関してはほとんど知らなくて驚いていた。

ただ刀子の話を聞くと仮契約は学生のおもちゃのような扱いになっていて、特に魔法使い同士の恋人だと仮契約するのが定番だが別れた時に契約をどうするかで揉めるのも定番らしい。


「マスター、仮契約しよ!」

「ちなみに一番簡単な仮契約は専用魔法陣でキスすることよ。 それが恋人同士でする理由の一つ。 まあ他の方法もあるけど、若い子はたいていキスで簡単に仮契約してるわ。」

「えー!? キッキス!?」

アーティファクトという便利なマジックアイテムが欲しいからか、それとも仮契約は恋人同士ですると聞いたからか桜子が真っ先に横島に仮契約しようと言い出すが刀子が仮契約の方法を説明すると少女達は顔を赤らめて騒ぎ始める。


「キスだと!? それじゃ、さっそく刀子さんと仮契約をせねばっ!」

「私はしません!!」

「マスター、私と仮契約しよ!」

「未成年は軽々しくキスしたらあかん。 好きな人出来るまで待つんだ。」

尤も騒いでいたのは横島も同じでさっそく刀子に仮契約を頼むが、悩む間もなく拒否されて落ち込んでしまう。

そこにすかさず桜子が慰めつつ横島に仮契約を迫るが、流石に横島も誰彼構わず仮契約というかキスをする気はないらしくちょっと残念そうな表情を見せつつも桜子に自制するように諭していく。
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