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平和な日常~冬~6

テスト勉強で賑やかな店内だが横島は急遽占いを頼まれて個室に入っていたのだが、今日の占いの客はいつもとだいぶ様子が違う客であった。

客は年の頃は三十代半ばの女性なのだが初見の客である。


「あの、こちらの占いは大変よく当たると聞きまして。 実は私には夫が居るのですが、夫が浮気してるみたいなんです。」

誰から聞いたのか知らないが占いを頼みに来た女性は、横島を前に身の上話を始めた。

なんというか長々と身の上話を語っていく女性だが、彼女の夫はいわゆる飲む打つ買うの三点セットが好きな男らしい。

加えて酒癖が悪く酒を飲んでは暴れるとのことで、夫と別れようか悩んで占いに来たようである。


「失礼ですがご両親は?」

「父も母もすでに亡くなってます。」

はっきり言えば女性は負の気を抱え込むような性格らしく、見た感じからマイナスのオーラを持つような女性だった。

正直横島は占いよりも両親にでも相談したらいいと思い両親の存在を確かめるが、あいにくと両親は他界しているようだ。


「占いをするのは構いませんけど、真剣に自分の人生を考えてるなら弁護士とか専門家に相談した方がいいと思いますよ。 占いは所詮占いなんで人生を左右する決断を占いに頼るべきでらないかと。」

話を聞く限りまるで三流ドラマにでも出てきそうなダメ男の亭主のようだが、横島はそれ以前に女性側の問題が気になり夫とは結婚当初から別れる別れないと揉めていたらしい。

いわゆる別れたいけど別れられないという依存症のようなかなり厄介な性質がある女性のようなのだ。


「そうなんですけどね。 いざとなるとなかなか行動に移せなくて。」

「ちょっと待ってて下さい。」

基本的に横島の占いの客は十代の女の子なのであまり変な占いの客は来ないが、ごくまれに今日のような厄介な客が来ることがある。


「ここに連絡して行ってみて下さい。 夫婦の問題に詳しい専門家ですから。 失礼ですがお客さんの依頼は占いで占うには向かない依頼なんで。」

女性の話を聞いた横島は占いをせずに一旦占いをしている部屋から出ると、急遽近右衛門に連絡して夫婦の問題に詳しい離婚カウンセラーを紹介してもらい女性にはそこに行くようにと諭す。

正直そこまでする必要はないと横島も思うが、下手に占いをすると今度は占いに依存されそうで怖かった。

そもそも女性は困って占いに来たとは言うが、離婚したいが出来ないと自分で言う辺り重症というかめんどくさい人である。



「変わったお客さんでしたね。」

「あの人、マイナスオーラを背負ってること自分で気付いてないっぽいね。」

最終的に横島は占いを頼みに来た女性に占い頼ってはダメだと占いを否定して専門家の元に行くようにと勧めて帰していた。

女性が帰ると横島は一気に疲れた表情をしていたが、夕映達や常連の少女達は先程の女性が変わった客だと気付いていて興味ありげに横島にどんな依頼なのかと尋ねている。

流石に横島も依頼内容はこの場では口にしなかったが、占いに向かないから専門家を紹介したと言うと少女達はあまりに占い師らしくない行動に思わず笑ってしまっていた。


「あの手の客とかの重い内容の占いは困るんだって。 外れて不幸になっても困るし当たって占いに依存されても困る。」

「マスターそうやって親身に相談に乗るから占いのお客減らないんだよね。 別に占いなんだからそこまでしなくても適当に占って終わればいいのに。」

ぐったりした様子の横島であるが常連の少女の一人は、無料でしている占いでそこまで親身になる横島のお人好しさ加減に呆れたように笑っていた。



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