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平和な日常~冬~6

一方この頃には次回の麻帆良亭の営業日が正式に決まり三月一日の土曜日と決まる。

当初は二月の最終日曜を考えていたが、テスト勉強期間の最中ということで三月一日になっていた。


「うむ、これほど早く気付かれるとはのう。」

そんなこの日の夜には急遽近右衛門と高畑が呼ばれ夕食の時から残っていた刀子を加えて、少女達に赤き翼の嘘がバレたと明かしたが近右衛門は感心した様子を見せた程度だ。

正直遅かれ早かれ誰かが気付くのは時間の問題だったし、情報化社会である現代でいつまでも隠せるものではない。


「夕映君と宮崎君は横島君と一緒に居るようになってから変わったからね。 物事を見る視点が大人と変わらないというか、それ以上だ。 勘もいいしいつまでも隠せるとは思えなかったが。」

この件に関しては横島を含めた大人組は積極的に真実を教えるつもりはなかったが、同時に真実を知る邪魔もしないとの立場であった。

夕映には少し酷評された高畑であるが、横島の影響を受けた夕映とのどかならば近いうちに真相にたどり着くとほぼ確信していたらしい。

実際二人は物事を見る視点や勘が以前と比べて桁違いに良くなっている。


「問題は神楽坂さんのことなのでしょう?」

「それは最早確認する証拠がないんだけどね。 横島君の封印を解ける者が居れば別だけど。」

ただここで問題なのは明日菜の正体だけは絶対に少女達には明かせないとのことだった。

しかし実質的に問題なのは実はそこだけで実際明日菜をアスナ姫だと証明するのは最早能力の封印により不可能なのだから、要は夕映達にアスナ姫と明日菜を同一人物だと気付かれなければいいのだ。


「横島君はどう思うかの?」

そのまま近右衛門と高畑と刀子は今後の方針を話し合うが、近右衛門はずっと無言の横島に意見を求める。

元々横島はあまり深く考えるタイプではないが勘の良さと状況の見極めは評価が高い。


「封印はその存在すら気付ける者すら居ないっすよ。 仮に気付いても解除は主神でも不可能です。 個人的には明日菜ちゃんの正体以外は時期を見て話してもいい気はしますけどね。 というかあんまり隠すと後で明日菜ちゃんの正体を余計に疑われるだけかと。」

そして横島であるが、あそこまで気付かれた以上は明日菜の正体を隠す意味も含めて時期を見て真相を話した方がいいと考えていた。


「ただ問題なのは記憶の方っすよ。 記憶は俺も手を付けてないんで何かの拍子に思い出すこともあり得なくはないですし、それに可能性だけでいえば第三者でも解除は出来ると思います。 記憶も俺の方で封印なり消去なり出来ますけどどうします?」

ただ横島も悩んでいるというか判断に迷っている件があり、それは明日菜の封印された記憶だった。

今のところ封印が解ける心配はないが何かの拍子に封印が解ける可能性もない訳ではなく、そしてこの世界の技術での封印なので第三者にも封印を解除出来るのも長期的には問題になる。

むろん横島は明日菜を第三者による解除のような状況にするつもりはないのでそちらはあまり心配はしてなかったが、こうなると赤き翼の過去を聞いて自力で思い出す可能性が高くなるのだ。


「記憶か。」

魔法世界の問題は最早明日菜一人の問題ではなく、二つの世界の未来に影響する問題である。

仮に明日菜が自分が犠牲になると言い出してもそれで魔法世界を現状のままで延命などすれば、結局は今までと同じく地球の魔力を魔法世界の維持の為に使うことになり長い目で見ると地球の損失になる。

明日菜の記憶をどうするべきかは正直すぐに即決できるほど軽々しい問題ではなかった。

明日菜個人の為にはどうすればいいかを含めて慎重に考える必要があった。


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