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平和な日常~冬~6

「女子校って普通はバレンタインに無縁なのよね。」

一方女子中等部の二年A組ではバレンタインの話題が出ていたが、女子校である女子中等部では正直さほど盛り上がってる訳ではない。

女子中等部とはいえサークルや部活動などで男子と関わる機会はあるものの、そのチャンスは必ずしも共学と比べると多い訳ではなかった。

円は横島の話をしている友人達を眺めつつ、自分にもドキドキするような相手が欲しいと愚痴る。


「クギミーは一人だけ別なのよね。」

「クギミー言うな。 別だって言うならあんたも同じじゃん。」

現在2ーAでは横島と親しい木乃香達に美砂達なんかがクラスの中心的な存在になっていたが、横島に近く個人的に横島に友情以上の意識がないのは円とハルナの二人であった。

ハルナはそんな冷静な円を面白くなさげに声をかけるが、立場的にはハルナと円は意外に似ている。

横島に恋愛感情はないが、それは別に横島が嫌いだと言う訳ではなくイマイチフィーリングが合わないだけだった。

いい人だとは思うし魅力的なのも理解はするが、燃え上がるような感情が湧いてこないのだ。

まあこればっかりは好みの問題なんだろうと円自身は思うが。



「ワシには義理チョコはないのかの?」

「甘い物の取りすぎはダメだと木乃香お嬢様から聞いてますのでお酒にしました。」

一方この日刀子は学園関係者や同僚の教師に義理チョコを配っていた。

中には自分は要らないと言う人も居るが、大抵は受け取ってくれる。

教師と言えども人であり職場のコミュニケーションは大切だった。


「それはすまんのう。」

当然ながら上司とも言える近右衛門にも義理チョコというか義理チョコ代わりのお酒を持参するが、近右衛門は意外にも義理チョコを欲しがるので刀子は毎年あげている。


「こういう言い方をするのは失礼かもしれませんが、男性は義理でも貰えないと落ち込むんですね。 恥ずかしい話この年になって初めて知りました。」

「うむ、義理チョコを貰ってもお返しが金銭的に大変だとぼやく者も居るがの。 じゃが大半の男性は貰えんとそれはそれで面白くないのは確かじゃろう。」

半ば冗談のように義理チョコを催促する近右衛門に義理チョコをあげる女性教師は多いが、正直刀子は催促してまで欲しがる近右衛門は変わり者だと以前までは感じていた。

だが今年は横島がバレンタイン絡みで過去にトラウマがあるという話を木乃香達としたこともあり、少しだけ男性の気持ちを理解している。

ぶっちゃけ刀子は去年までは義理チョコを面倒だと考えていて、同僚の女性教師に合わせる形でしかたなくあげていたのだ。


「なんというか男性は単純ですね。」

「男はみんなそんなもんじゃよ。 じゃが刀子君に関しても昨年の後半くらいから雰囲気が柔らかくなったと評判じゃぞ。 横島君との噂は本当なのかとワシにまで聞きに来た者もおるしのう。」

「はい?」

「誰とは言えんが君に好意がある者は何人か居るようじゃ。」

基本的に明け透けで喜怒哀楽をそのまま表す横島と関わるようになってから、刀子は男性の本音や気持ちを初めて知ったことも多い。

近右衛門に義理チョコ代わりのお酒を渡しにきたついでにふと本音を漏らした刀子に、近右衛門は面白そうに笑みを浮かべると刀子が密かにモテてる話を教えて刀子を驚かせていた。

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